桑木志帆がAIG全英女子オープンを制しました。
最終日は通算5アンダーでエスター・ヘンゼライトと並び、18番ホールを繰り返すプレーオフへ。1ホール目はティーショットを右へ曲げながら、3打目を約1メートルにつけてパーを拾いました。2ホール目はフェアウェーとグリーンを捉え、2パットのパー。ヘンゼライトがボギーとして決着しました。
派手なバーディーで決めたというより、危ない場面で崩れずに二つのパーを並べた勝利でした。リンクスでは、こういうゴルフが強いのでしょうね。
全英女子オープンは日本勢が3人目
AIG全英女子オープンで日本選手が優勝するのは、2019年の渋野日向子、2025年の山下美夢有に続いて3人目です。山下から桑木へ、日本勢の大会連覇にもなりました。
海外メジャー全体では、1977年の樋口久子、渋野日向子、笹生優花、古江彩佳、西郷真央、山下美夢有に続く7人目。笹生が全米女子オープンを2度勝っているので、日本勢のメジャータイトルとしては通算8勝になります。
- 樋口久子 1977年 全米女子プロゴルフ選手権
- 渋野日向子 2019年 AIG全英女子オープン
- 笹生優花 2021年、2024年 全米女子オープン
- 古江彩佳 2024年 アムンディ・エビアン選手権
- 西郷真央 2025年 シェブロン選手権
- 山下美夢有 2025年 AIG全英女子オープン
- 桑木志帆 2026年 AIG全英女子オープン
樋口久子から渋野日向子までは42年かかりました。ところが、2024年から2026年までの3シーズンだけで5つのメジャータイトルです。ここまで続くと、もう「たまたま一人のすごい選手が現れた」だけでは説明できないと思います。
渋野日向子の優勝から流れが変わった
2019年に渋野日向子が全英女子オープンを勝った時は、まさに突然の出来事でした。海外メジャー初出場で優勝。しかも、笑顔でお菓子を食べながらプレーして、最後は18番でバーディーパットを決める。あの映像を覚えている人は多いと思います。
当時は「42年ぶりの快挙」でしたが、あの優勝は次の選手にとって、世界のメジャーが現実の目標へ変わるきっかけになったのかもしれません。
桑木は2003年1月生まれですから、渋野が勝った2019年は16歳。しかも二人は同じ岡山市出身です。少し上の身近な選手が世界で勝つ姿を見た世代が、今度は自分で同じトロフィーを手にしました。
宮里藍に憧れた選手が育ち、黄金世代が切磋琢磨し、その黄金世代を見た次の世代、さらに次の世代が世界へ出ていく。女子ゴルフでは、この連鎖がうまく続いているように感じます。
| 年 | LPGA公式勝利数 | うち日本国外開催 | メジャー勝利数 | 主な優勝者 |
|---|---|---|---|---|
| 2019 | 3 | 2 | 1 | 畑岡奈紗、鈴木愛、渋野日向子 |
| 2020 | 0 | 0 | 0 | — |
| 2021 | 3 | 3 | 1 | 畑岡奈紗〔2勝〕、笹生優花 |
| 2022 | 2 | 2 | 0 | 畑岡奈紗、古江彩佳 |
| 2023 | 1 | 0 | 0 | 稲見萌寧 |
| 2024 | 3 | 2 | 2 | 笹生優花、古江彩佳、竹田麗央 |
| 2025 | 7 | 6 | 2 | 竹田麗央、西郷真央、岩井千怜、山下美夢有〔2勝〕、岩井明愛、畑岡奈紗 |
| 2026年8月2日まで | 2 | 2 | 1 | 山下美夢有、桑木志帆 |
| 合計 | 21 | 17 | 7 | — |
日本で活躍して、海外へ行く道ができた
桑木の優勝で特に面白いのは、米女子ツアーを主戦場にしていた選手ではなかったことです。
2026年の宮里藍サントリーレディスで優勝し、国内大会の資格枠からAIG全英女子オープンへ出場。そのままメジャーを勝ち、米ツアーの長期シードを得ました。国内ツアーからメジャーへ直接進み、勝利によって米ツアーへの道を開いたわけです。
山下美夢有のように、国内で年間女王になるほどの実績を積み、予選会を経て米ツアーへ移るルートもあります。竹田麗央のように、日本開催の米ツアー公式戦を勝って出場資格を得る道もあります。そして桑木のように、国内大会でメジャー出場権を取り、そのメジャーを勝つ方法も出てきました。
海外へ行く道が一本ではなくなっています。全員が高校や大学から米国へ渡る必要もありません。まず日本のツアーで腕を磨き、世界ランキングや国内大会の資格枠を使って海外へ挑戦する。日本で活躍してから海外へ、という流れがしっかり作られてきたのだと思います。
強い世代が交代するのではなく、重なっている
女子ゴルフでは、渋野日向子、畑岡奈紗、勝みなみ、原英莉花らの「黄金世代」が注目されました。その後も古江彩佳、西郷真央、山下美夢有、岩井明愛・千怜、竹田麗央、桑木志帆と若い選手が次々に出ています。
ただ、今は一つの世代から次の世代へ完全に入れ替わったというより、複数の世代が同時に世界で戦っています。前の世代が経験したコース、移動、練習方法、生活の情報が、次の選手へ渡るようになったのでしょう。
海外で戦う日本選手が増えれば、誰かが調子を落としても別の選手が上位へ来ます。練習ラウンドや生活面でも日本語で情報交換ができます。一人で未知の世界へ乗り込むのとは、かなり違うはずです。
国内女子ツアーの強さが土台にある
日本の女子ツアーは試合数も賞金規模も大きく、プロテストに合格した後も、レギュラーツアーやステップ・アップ・ツアーで実戦経験を積めます。国内で高いレベルの競争を続けながら、スポンサーを得て、海外遠征の費用やチームを準備できる環境があります。
桑木も最初から順調だったわけではありません。2022年はメルセデス・ランキング51位でシードを逃し、2023年に10位へ上昇。2024年に初優勝し、2026年は国内で2勝して全英へ向かいました。国内ツアーで負けながら力をつけた選手です。
今回の全英でも、ただ勢いだけで勝ったわけではないと思います。全米女子オープン、KPMG女子PGA選手権、エビアン選手権とメジャーの経験を重ね、最後にリンクスで結果を出しました。
渋野日向子の2019年は、日本女子ゴルフにとって閉じていた扉を開けたような優勝でした。それから7年で、全英女子オープンの日本人チャンピオンは3人になりました。
桑木志帆の優勝はもちろん大変な快挙です。ただ、今の日本女子ゴルフを見ていると、「また奇跡が起きた」というより、「次は誰が勝つのだろう」と思うようになりました。
日本で育ち、日本で強くなり、海外へ出て世界で勝つ。その道は、もう特別な選手だけが通れる細い道ではなくなってきたのかもしれません。
出典元:LPGA AIG Women’s Open公式結果、JLPGA 宮里藍サントリーレディス最終日記事、添付資料「偶然ではなくなった『全英制覇』――桑木志帆の優勝から読む、日本女子プロゴルフ繁栄の軌跡」

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