2006年ごろ、東京の地下鉄のフリーペーパーコーナーに「GOLDEN min.(ゴールデンミニッツ)」という雑誌がありました。
表紙には男性俳優やミュージシャンの顔が大きく載っていました。中も写真が多く、紙質もよかった。駅に置いてある無料の冊子なのに、「これがフリーペーパーでいいの?」と思ったことを覚えています。
先日、ゴルフのフリーマガジン『Go!gol.』の書いたのですが、ふとGOLDEN min.のことも思い出しました。
2006年、東京メトロで創刊された
調べてみると、GOLDEN min.はスターツ出版が2006年5月26日に創刊した月刊のフリーマガジンでした。毎月26日発行で、東京メトロ59駅に設置した159台の専用ラックで無料配布されていました。
対象にしていたのは、東京メトロを利用する50代男性です。50代からを人生でもっとも輝く「ゴールデンタイム」と考え、仕事だけではなく、食、お金、人とのつながりなどを扱う雑誌でした。
創刊号の表紙は矢沢永吉さん。その後は竹中直人さん、西田敏行さんなどが表紙になっています。当時の紹介記事を見ると、著名人の顔を大きく配した表紙と、質の高い写真や文章が評価されていたようです。


フリーペーパーが面白かった時代
あの頃の地下鉄には、いろいろなフリーペーパーがありました。
若いビジネスパーソン向けのR25、女性向けや街の情報誌、求人誌、そして少し上の世代に向けたGOLDEN min.。駅のラックを見ると、新しい号が置かれていて、気になったものを電車の中で読む。いま考えると、駅そのものが情報を見つける場所になっていました。
GOLDEN min.は、ただ無料で情報を詰め込んだ冊子ではありませんでした。誰に読んでもらいたいのかがはっきりしていて、表紙を見ただけでも普通のフリーペーパーとは違うことが分かりました。
無料だから気軽に手に取れる。でも、中身は有料の雑誌に近い。その少し得をしたような感じも、フリーペーパーの楽しさだったのでしょうね。
紙だから偶然手に取った
僕はGOLDEN min.を探して駅へ行ったわけではありません。地下鉄を利用したときにラックで見かけ、表紙が気になったから手に取りました。
ここは、いまのデジタルメディアと少し違います。
ネットでは、自分が検索したものや、過去に見たものに近い情報が表示されます。便利ですが、自分の興味から遠いものは見えにくくなります。駅のラックには、自分が知らなかった雑誌も同じ場所に並んでいました。そこには偶然の出会いがありました。
紙の大きな表紙、厚み、手触りも含めて、「ちょっと読んでみよう」と思わせる力があったのだと思います。
いま、駅のラックを見ることが減った
いまもフリーペーパーがなくなったわけではありません。ただ、以前ほど地下鉄のラックを楽しみに見ることはなくなりました。僕自身、ニュースも趣味の情報もスマートフォンで読むようになっています。
紙のフリーペーパーは、広告収入から印刷費や配送費を出さなければなりません。どれだけ読まれ、広告を見て商品を買った人が何人いたのかも、Webほど細かく測れません。広告がデジタルへ移れば、紙だけで続けるのは難しくなります。
情報を受け取る場所は、紙からWeb、WebからSNS、そしてAIへ移りつつあります。分からないことがあれば検索し、いまはAIに聞けば短く整理してくれます。GOLDEN min.のような雑誌が駅で大量に配られていた時代には、想像していなかったことです。
デジタルには残りにくい記憶
デジタルは便利ですが、昔読んだWebページのデザインや、どこで読んだかまで覚えていることはあまりありません。
ところがGOLDEN min.は、地下鉄のラック、男性の顔が大きく載った表紙、紙の感じまで何となく覚えています。記事の内容はほとんど忘れているのに、雑誌を手に取ったときの印象は残っている。不思議なものですね。
紙には、情報以外のものも一緒に記憶させる力があったのかもしれません。
時代が紙へ戻るとは思いません。これから情報はさらにデジタル化され、AIが間に入ることも増えるでしょう。それでも、GOLDEN min.のように「無料なのに、こんなにちゃんと作ってある」と感じた媒体は、時間がたっても思い出します。
便利さではデジタルにかなわない。でも、偶然見つけて手に取り、持ち帰りたくなるものには、別の価値がありました。GOLDEN min.を思い出すと、フリーペーパーが面白かった時代は確かにあったのだと思います。
確認した資料
※創刊日、発行形態、配布場所、対象読者は当時のスターツ出版資料で確認しました。個人的な印象や記憶は、僕が当時手に取ったときのものです。


コメント