非業の最期を遂げた美里との約束―。小樽の街を見下ろすホテルを設計することは、晴之の悲願だった。建設の発注元は、巨大企業「サンライズ実業」。学生時代の親友が働くその企業には、美里を死に追いやった憎んでも憎み足りない御曹司がいる。しかも、その男の妹は美里と瓜二つなのだ…。その女への恋心と、同世代の建築家の中で頭一つ抜き出た学友への嫉妬心を押し隠し、金と欲が渦巻く「サンライズ実業」の中枢に食い込もうとする晴之。運命が仕組んだ糸に翻弄されながら、たった一つの夢のために己の全存在を懸けて戦った男が辿り着く、衝撃と哀愁のラストとは。
白川道氏の久々の長編小説。作家との相性というのはあると思うんですよね。僕にとって白川道氏の小説は相性がいいのでスンナリ物語に入って行けた。本書は主人公の晴之と小樽署の元刑事渡の2人の視点で描かれている。一流の建築家となり小樽に自分が設計したホテルを建てる夢を追い続ける晴之だが彼の前にはいろいろな人々が立ちはだかる。そして、元刑事は自分が手がけた未解決事件の糸口を見つけてから奔走し、徐々に真相に迫る。2人の接点はないが、お互いが交わるときに物語はクライマックスに。
事件の事や結末に突っ込みを入れたくなるかもしれないけど、それ以外では感動し泣けます。電車の中で読んでいて涙が出てきた時には俯いて涙を拭いましたよ。こういう小説を書ける人なのでもっと執筆して欲しいですね。
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