花村萬月の最新本『たびを』を読み始めた。萬月さんが自身のHPで「2段組1000ページでこの値段は安い」と宣伝していたが確かにやすいかもしれないけど、デカイ。鞄に入れて持ち歩いているのだが本2冊分の重さ(917.6グラム)だし、電車でつり革に掴まって読むのも大変。でも、面白いからやめられない。どんな話かというと19歳の谷尾虹児がスーパーカブで日本一周野宿旅をする話なんだが、そこはバイク好きの萬月さんらしいこだわりが細部にちりばめられているみたい(まだ、そこまで読み進んでいないから)。それと、いつもの萬月文学であるから主人公の自意識とか妄想とか・・・。リアリティがあって結構つぼにはまったりして、これがまたいい。
まだ、読み始めたばかりだがこういう本って早く先を読みたいけど、最後の方になると読み終わるのがもったいないような感じになるんだよな。でも、早くよんじゃおう。
「早い話、あなたはバカだったのね」
いきなり、モモが切り棄てた。谷尾虹児は腹立ちを覚える前に、怯んでしまった。情けない愛想笑いを泛べながら、肯定するしかない。(p1)
いきなり話の出だしが「あなたはバカだったのね」だもんな。でも、すんなり話に入れるから面白い。それと、「肯定する」というのが萬月さんらしい言い回しだ。
虹児は確信した。胸が苦しくなった。心も、軀も昴っていた。無理な方向に勃起しかけたので、鈍い痛みを覚えた。虹児はききわけのない分身の位置をジーンズの上から矯正して、溜息をついた。(p30)
こういうところが笑えるし好きなんだよな。こういうリアリティが。それも、“直す”ではなくて“矯正”というのが萬月文だな。
コメント
花村萬月「ゲルマニウムの夜/たびを」満月
プロフィールとペンネームから、世俗的な小説家かと思ってはいけません。圧倒的な文章力です。本自体もブ厚くて存在感がありますw