フジクラ SPEEDER EVOシリーズとSPEEDER NXシリーズの違いについて深掘りしてみました

Golf

1. SPEEDER EVOシリーズとSPEEDER NXシリーズの違い

SPEEDER EVOシリーズ(エボリューションシリーズ)は2014年に初代が登場して以来7世代にわたり進化を重ねた人気シリーズです。一方、SPEEDER NXシリーズは2021年に初登場した新世代シリーズで、「EVOLUTION」から一線を画す設計思想です。両シリーズの最大の違いは設計コンセプトにあります。EVOシリーズは「シャフトの走り感」を追求し、モデルによって先調子や中調子など細かく特性を分けていました。一方、NXシリーズは「安定性と再現性の両立」がテーマで、全体的に挙動が滑らかでタイミングが取りやすく、インパクト効率が高い点が特徴です。

この違いを踏まえ、EVOシリーズはスイングスピードが速い人や先調子寄りの挙動を好むプレーヤーに適したシャフト群でした。特に高慣性モーメントの新世代ヘッドと組み合わせると、EVOシリーズは高初速・高弾道を発揮しますが、逆にスイングテンポがゆっくりな人や安定性重視の人には扱いづらい面もありました。一方、NXシリーズVTC(Variable Torque Core)という新技術でシャフトのトルク分布を部位ごとに最適化しており、ヘッド挙動を安定させながらシャフト全体のしなり戻りのスピードと再現性を高次元で両立させた点が画期的です。VTCにより、手元側と先端側のトルクを抑えつつ中間部にややトルクを持たせる設計となり、インパクト時のフェース開閉を抑制してスピン量を安定させ、切り返しでタメを作りやすくタイミングを取りやすいメリットがあります。この結果、NXシリーズは中調子にも関わらず振りやすさがあり、インパクト時の安定感に優れると言えます。実際、EVOシリーズで球のばらつきがあった人やスイングにムラがあるゴルファーにとっては、NXは非常に扱いやすく結果につながりやすいモデルとされています。

また、両シリーズの重量帯・フレックスの傾向も異なります。EVOシリーズは「スピーダーらしい弾き感」を追求し、各世代ごとに「先調子」「中元調子」「中調子」など調子設定が変化しました。例えば、EVOシリーズでは40g台の474、50g台の569、60g台の661、70g台の757など、スイングスピードや重量感に応じたモデル展開が行われています。一方、NXシリーズは重量帯を3つにまとめ、50g台のNX50、60g台のNX60、70g台のNX70というモデルで構成されています。これらはそれぞれ「中調子」「中元調子」「手元寄り」の調子設定になっており、対象ゴルファーもヘッドスピードやスキルレベルに応じて明確に分かれています。以下の表にEVOシリーズとNXシリーズの主要モデルの重量帯と推奨スピードを比較します。

シリーズ 重量帯(推定) 推奨ヘッドスピード 特徴
SPEEDER EVOシリーズ 474: ~49g / 569: ~57g / 661: ~65g / 757: ~76g 474: ~38m/s / 569: ~40m/s / 661: ~44m/s / 757: ~48m/s 各モデルで調子(キックポイント)が異なり、走り感や高初速を重視。スイングスピードに合わせた剛性配分。
SPEEDER NXシリーズ NX50: ~55g / NX60: ~65g / NX70: ~75g NX50: ~40m/s / NX60: ~43m/s / NX70: ~46m/s 3モデルのみで重量帯を設定。調子は中調子〜手元寄りで、VTC技術で安定性と再現性を両立。

この表のように、EVOシリーズはモデル数が多く調子ごとの重量・スピード範囲が細かく設定されています。一方、NXシリーズは重量帯を大きく分け、調子と重量の組み合わせでターゲットを限定しています。この違いは、NXシリーズが「ユーザー層を明確に分けて最適化した設計」であることを示しています。

2. 各モデルの技術進化と使いやすさの向上

SPEEDERシリーズは各世代ごとに素材や設計技術が進化し、飛距離性能と操作性の両立を追求してきました。特にEVOシリーズでは、東レの高弾性繊維T1100Gや「50トン級3軸織物技術」など最先端素材を採用し、世界初に「高打ち出し・低スピン」を実現しました。従来は「高弾道=スピン増」という常識を覆し、圧倒的な飛距離と安定感の両立を達成した初代EVOは、「飛ぶシャフトの最高峰」として評価されました。

その後のEVOシリーズでは、素材のさらなる強化設計の高度化が進みました。例えばEVO IV(2017年)では超高弾性70tのカーボンクロスを採用し、エネルギーロスを減らしてより弾きやすくなる仕様となりました。EVO V(2018年)はEVO IVをベースに最先端技術を駆使して振りやすさを追求し、最新の大型ヘッドとのマッチングを考慮して「適度なつかまり感」を実現しました。EVO Vは発売前から国内女子ツアーで使用者が急増するほど人気で、「初代EVO以降最大のヒット」とも評されています。

EVO VI(2019年)はさらに超高弾性90tカーボンを採用し、軽量化と剛性維持を両立しました。また、フープ層を内層と外層に2枚構成する「マルチフーププライ積層」を導入し、シャフトの潰れを抑制して曲げ剛性を向上させました。さらにMCT®(Metal Composite Technology)により金属との複合化を可能にし、安定感の高いしなり戻りを実現しています。これらの技術革新により、EVO VIはエネルギー伝達効率を一段と高め、叩いても暴れず安定しつつ飛距離を伸ばせるシャフトとなりました。

最新のEVO VII(2020年)はEVO VIをベースにアップデートされた7代目で、振り抜き感と安定性のバランスが一段と向上しています。試打レビューでは「IIIとVのいいとこどり」と評され、切り返しでは穏やかなしなり感がありつつダウンスイング以降は強烈な弾き感が得られるとの声があります。つまり、操作性と飛距離がバランスよく向上したモデルで、試合で頼れる武器になるとの評価です。EVO VIIは先端剛性を高めつつマイルドなフィーリングを実現し、最近の高MOIヘッドでもリズムを狂わせにくく安定してボールをつかまえられるようになっています。

一方、NXシリーズは新技術「VTC」を採用することで飛距離と安定性のバランスを飛躍的に高めました。VTCにより手元側と先端側のトルクを抑え、中間部にトルクを持たせる設計となり、インパクト時のフェースブレを抑制しつつ高初速・高弾道を実現しています。実際、VTCを搭載したNXはエネルギーロスが少ない設計で方向性と飛距離を高次元で両立している点が特に評価されています。また、NXは「EVOの走り感」と「VENTUSの安定感」を融合した設計とも言われ、手元剛性が高いにも関わらず中間部のトルクを緩めて切り返しでマイルドなしなりを得られるため、タイミングが取りやすいという特徴があります。

総じて、各モデルの技術進化は「より高い飛距離」と「より扱いやすい安定性」の両立を追求しています。EVOシリーズはスピーダーらしい強烈な弾き感と走り感を維持しつつ、毎世代で設計が洗練されていきました。NXシリーズはそれまでの進化を踏まえ、ユーザーのスイングにより寄り添う安定感を打ち出しています。これにより、EVOシリーズが各世代で新技術を取り入れることで飛距離性能が向上した一方、NXシリーズは最新技術を駆使して操作性と安定性を飛躍的に高めることで使いやすさを大きく向上させたと言えます。

3. アベレージゴルファーに適した旧モデルオススメ

新技術の登場によりEVOシリーズやNXシリーズは飛躍的に進化していますが、旧モデルでもアベレージゴルファーに優しいモデルは数多く存在します。以下に、アベレージゴルファー(ヘッドスピード約40~45m/s程度、中級者レベル)に適した旧モデルをいくつか紹介します。

  • Speeder EVOLUTION 5(スピーダー エボリューション5) – 2018年発売の5代目EVOモデルで、飛距離性能と操作性のバランスに定評があります。しなやかさと粘り感があり、暴れにくくつかまりが良い設計で、幅広い層に支持されています。推奨ヘッドスピードは40~45m/s程度で、ヘッドスピードがその範囲の中級者にピッタリです。実際、多くのアベレージゴルファーがEVO5を使いこなし、「振り抜きがスムーズで安定感がある」「捕まりすぎない安心感がある」といった声が目立ちます。特にスピード系シャフト特有の暴れやすさを抑えつつ直進性を高めた点が好評で、アベレージ層に人気のシャフトです。
  • Speeder EVOLUTION 4(スピーダー エボリューション4) – 2017年発売の4代目EVOモデルで、中調子で球がつかまりすぎない万能型の弾き系シャフトとして知られます。EVO4はスイングテンポの速い人に適し、ヘッドスピード43m/s前後の中級〜上級者にマッチします。「中調子ながら高弾道」で飛距離アップを実感でき、左への引掛けのミスを嫌うゴルファーに向いているとされています。安定した飛距離と方向性の両立に優れ、「飛んで曲がらないつかまり系」として幅広いゴルファーにフィットする仕上がりです。
  • Speeder EVOLUTION 3(スピーダー エボリューション3) – 2016年発売の3代目EVOモデルで、中調子の安定型です。EVO1(2014年)と同じ先中調子ですが、EVO1より先端の動きがややゆっくりで、EVO2(2015年)の剛性をしなやかに進化させた設計となっています。これによりタイミングを取りやすく、スイングリズムが安定しやすい特徴があります。EVO3は飛距離が最重要課題で弾道を高くしたい人におすすめで、「エボ6同様、30g台(474)から使えるモデル」としても知られています。
  • Speeder EVOLUTION 2(スピーダー エボリューション2) – 2015年発売の2代目EVOモデルで、中調子の粘り系シャフトとして評価されています。1代目より先端剛性を上げ、しっかり叩いても左にひっかからない安定性を実現しました。EVO2は「中調子で球がつかまりすぎない」設計で、左にいかない低弾道・適度な弾き感が特徴です。適正ヘッドスピードは44~52m/s程度とやや厳しめですが、飛距離は申し分ありません。「スライスしない!飛距離アップおすすめシャフト」としても紹介され、スライサーの人にもマッチしやすいシャフトです。
  • Speeder EVOLUTION 1(スピーダー エボリューション1) – 2014年発売の初代EVOモデルで、先中調子の安定型です。スピーダーとしての走り感を保ちつつ、ヘッドの挙動が安定しており、切り返しでブレずに安定感を重視した設計でした。2014年発売時は「これまでにないハイスピードシャフト」として注目され、その速さは当時一線級とされました。しかしEVO1はしっかり振り切ったときにタイミングが合う、ややピーキーな特性で、ハードヒッター向けとも言われています。最近の高慣性ヘッドとのマッチングでは、ハードヒッター以外には「少し硬く感じる」という声もあります。しかし初代EVOは飛距離性能に定評があり、スイングスピードが速い中級〜上級者で、安定した方向性を求める人には依然として人気です。

以上のように、旧モデルでも「飛距離と安定性のバランスに優れる」「振りやすくミスに強い」シャフトが多数存在します。特にEVO3・EVO4・EVO5は、ヘッドスピード40~45m/s程度の中級者に適した万能モデルとして評価されています。例えばEVO5は「中調子の安心感」「幅広いゴルファーに合う万能さ」がメリットであり、一方で「もっとしっかり感が欲しい」というパワーヒッターからは物足りないと感じられることもあります。その場合は661や757といった重量帯を選ぶと、よりフィットするでしょう。アベレージゴルファーにとっては、旧モデルでも「自分に合うシャフト=安定して飛ばせるシャフト」であり、高価な新モデルにこだわらず性能の高い旧モデルを活用する選択肢も十分あります。

4. 新技術のメリットを享受できる層

SPEEDERシリーズの新技術(例:VTCや超高弾性繊維、MCTなど)は確かに飛距離や安定性を飛躍的に高めるものですが、そのメリットを最大限享受できるのはある程度のスキルとパワーを持った層です。具体的には、ヘッドスピードが高く(目安:45m/s以上)、スイングのタイミングがとれている上級者が新技術の恩恵を最大限得られます。この層は、新技術による高いエネルギー伝達効率や安定したインパクトで飛距離を伸ばし、ミスショットを抑制できるためです。

例えば、NXシリーズに搭載されたVTC技術は先端と手元のトルクを締めることで高初速・高弾道を実現します。これはハードヒッターでスイングスピードが速い人ほど効果を発揮します。実際、フジクラはVTC技術を「ドライバーのみ採用」としており、ヘッドスピードの高いプレーヤーがドライバーを叩く際に初速アップやスピン抑制が期待できるとされています。一方、ヘッドスピードが40m/s未満のゴルファーにとっては、VTC搭載シャフトの先端剛性が高めに設定されているため「シャフトがしならず棒のように感じる」恐れがあります。この場合、新技術のメリットを十分に引き出せず、むしろ飛距離ロスやスライスの原因にもなりやすくなります。

また、EVOシリーズのような新素材搭載シャフトもスイングスピードによって効果が変わります。例えばEVO VIは超高弾性90tカーボンを採用していますが、ヘッドスピードが低いとシャフトがしならずに高初速が出にくくなります。逆にヘッドスピードが高いと、その強いエネルギーをシャフトが弾き切ってボール初速を伸ばします。したがって、ハードヒッターやプロ選手ほどEVOシリーズの最新モデルの恩恵を得やすいです。実際、PGAツアーでも高慣性ヘッドと組み合わせて飛距離を伸ばす目的でEVOシリーズが使用されており、ツアープロのニーズに合った設計と言えます。

もっとも、新技術が必ずしもハイスピードプレーヤーだけに限定されるわけではありません。スイングスピードが中級〜上級で、スイングリズムが安定している人であれば、新技術の恩恵を十分に得られるでしょう。例えば、EVO5はヘッドスピード40m/s前後のアベレージゴルファーでも扱いやすく飛距離を伸ばせるモデルですが、最新のEVO7はヘッドスピード40m/s台でも振り抜きの良さを感じられると評されています。また、NXシリーズはヘッドスピード40m/s前後でも性能を最大限発揮できるようになっており、ハードヒッター以外にも取り入れやすくなっています。

総じて、新技術のメリットを最大限享受できるのは「適正ヘッドスピードを超えている層」「スイングの安定性と再現性が高い層」です。この層にとって、新技術搭載シャフトは飛距離をさらに伸ばし方向性を安定させる強力な武器となります。一方、ヘッドスピードが低めやスイングに不安定さがある層にとっては、新技術の恩恵を十分に得られない場合もあります。その場合、旧モデルのようにややしなりが大きくスイングしやすい設計の方が適していることもあります。

5. 旧モデルの価値と選び方のポイント

新技術を搭載したSPEEDERシリーズの最新モデルは性能面で確かに優れていますが、旧モデルにも十分な価値があり、アベレージゴルファーには大きく貢献してきました。各世代のEVOシリーズはそれぞれ「走り感」「弾き感」「安定感」といった強みを持ち、プロアマ問わず支持されてきました。例えば、初代EVOは圧倒的な飛距離で「飛ぶシャフトの最高峰」として知られました。EVO2は中調子にしっかり叩ける設計で、スライサーの人にもマッチしやすく安定性を向上させました。EVO3はタイミングが取りやすくスイングリズムが安定するので、スイングテンポがゆっくりな人にもフィットしました。EVO4は万能型で、飛距離と安定性のバランスが良いので中級者に人気でした。EVO5は最新ヘッドとの相性も良く、「飛んで曲がらないつかまり系」として幅広いゴルファーに支持されました。EVO6・EVO7もそれぞれ強みを持ち、プロからアマまで愛されています。

旧モデルを選ぶ際のポイントは、自分のスイングスピードとスキルレベルに合った調子と重量を見極めることです。例えば、EVOシリーズでは474(約49g)は軽量でヘッドスピード38m/s前後のシニアや女性ゴルファーにも適します。569(約57g)はミドライトな重量で振り抜きやすく、ミート率を重視するゴルファーに好まれます。661(約65g)はしっかりした剛性で叩ける設計で、ヘッドスピード43m/s前後の中級〜上級者にマッチします。757(約76g)は硬めでハードヒッター向けですが、その代わり飛距離性能が極めて高く、プロや高スピードの上級者が使用しています。

選び方のポイントとしては、「自分のヘッドスピードに合う重量帯」を押さえることが重要です。一般的に、ヘッドスピードが速いほどシャフト重量は重め、逆に遅いほど軽めに選ぶ傾向があります。例えばヘッドスピードが42m/s程度の人なら50g台、45m/s程度なら60g台が目安と言われます。また、「調子(キックポイント)」も重要です。スイングテンポが速め・タイミングが合いやすい人は先中調子や中調子が、スイングテンポがゆったり・ヘッドが追いつかない人は手元寄りの調子が適しています。例えばスイングがややゆっくりでヘッドが追いつかない人は、手元寄りのシャフト(先調子)を使うとヘッドを走らせやすくなります。逆にスイングが速くタイミングが取りやすい人は、中調子や先中調子で安定感を得られます。

旧モデルを選ぶ際には、実際に試打してフィーリングを確認することも大切です。古いモデルでも性能は十分ありますが、モデルによってフィーリングや硬さが異なるため、自分に合うかは手に取って振ってみることが大切です。また、メーカーの発売元資料や専門サイトのレビューも参考にしてください。各モデルの「適正ヘッドスピード」「特徴」「ユーザーの声」などを確認することで、自分に合うシャフトを見つけやすくなります。

以上のように、フジクラSPEEDERシリーズはEVOシリーズとNXシリーズで設計思想が異なり、それぞれのメリットがあります。EVOシリーズは毎世代で新技術を取り入れることで飛距離性能が向上し、NXシリーズは最新技術で操作性と安定性を飛躍的に高めています。しかし旧モデルでもアベレージゴルファーに優しいモデルは数多く存在し、それらは十分に高い飛距離と安定性を提供してきました。新技術の恩恵を享受できる層はハイスピードの上級者に限らず、適切な選び方をすれば旧モデルでも自分のゲームを大きく前進させることができます。選び方のポイントは、自分のスイングスピードとスキルに合った調子と重量を見極めることです。適切なシャフトを見つけることで、飛距離アップや方向性の安定につながり、ゲームの質向上に寄与するでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました