僕がアイナ・ジ・エンドを知ったのはBiSHの時代です。
BiSHはメンバーそれぞれの個性が強いグループでしたが、その中でもアイナの声と歌い方は、一度聴けば忘れられませんでした。きれいに歌うというより、体の中にあるものをそのまま声にしているような歌い方。ダンスも含めて、目で追ってしまう人でした。
そのアイナが、今ではソロのトップアーティストとして活躍しています。テレビアニメ『ダンダダン』第2期のオープニングテーマ「革命道中 – On The Way」が大ヒットし、以前から知っていた僕から見ると、一気にお茶の間まで届いたように感じます。
2026年9月13日の『日曜日の初耳学』には、そんなアイナ・ジ・エンドが出演しました。いまの活躍を紹介するだけではなく、あの声を本人がどう思ってきたのか、「革命道中」がどのように生まれたのか、そして家族との話まで聞ける回でした。

生まれた瞬間からハスキーボイスだった
番組で中心になったのは、アイナのハスキーボイスです。
米津玄師や布袋寅泰といったアーティストも惹かれる唯一無二の声。しかし、本人にとっては最初から自信のある武器だったわけではなく、コンプレックスでもあったそうです。
番組には大阪の実家から母親がサプライズで登場しました。親子でトーク番組に出演するのは初めてだったとのこと。母親によると、アイナは生まれたときの産声からハスキーだったそうです。
あとから作った声でも、売れるために身につけた歌い方でもない。生まれたときから持っていた声だったのですね。
番組では、18歳で一人で上京した頃の苦労や葛藤も語られました。いまの姿だけを見ると、最初から自分の個性を信じて進んできたように思ってしまいます。しかし実際は、嫌いだった部分や不安を抱えたまま、それでも歌い続けてきたのでしょう。
コンプレックスをなくしたというより、消せないものを自分の表現として使えるようになった。そこがアイナらしいと思いました。
「革命道中」のサビは「あ〜萎えるぜ」だった
一番驚いたのは、「革命道中」のサビにまつわる話です。
完成した曲では「あぁ唸るぜ」と歌っていますが、当初は「あ〜萎えるぜ」だったそうです。
いまとなっては「唸るぜ」以外は考えにくいのですが、最初から正解があったわけではありません。あれだけ印象に残る一言も、制作の途中で変わっていったことが分かります。
「革命道中」はアイナ自身が好きだった『ダンダダン』のために書き下ろした曲です。ただ作品の言葉を並べたのではなく、1番はオカルン、2番はモモの視点で恋愛模様を書いたと、以前の公式インタビューで話しています。
アニメのオープニング映像も、その視点に合わせて作られています。曲だけ、映像だけではなく、二つが合わさって『ダンダダン』の世界になる。何度も聴きたくなるのは、疾走感だけではなく、こうした細かな作り込みがあるからなのでしょう。
あの強い声を、あえて出しすぎない
「革命道中」はShin Sakiuraとの共同制作です。
公式インタビューによると、まずギターのコード進行を作り、そこからアイナが何時間も歌いながらメロディーを探していったそうです。Aメロだけで5〜6時間。さらにBメロでも同じように試し、それを何日も繰り返したといいます。
大ヒット曲というと、何か特別なひらめきによって一気に完成したように考えてしまいます。実際は、同じ部分を何時間も歌い、これだと思えるメロディーを探す。ずいぶん地道な作業です。
もう一つ面白かったのは、アイナの個性的な声をあえて出しすぎないようにしたことです。
アイナの声は強い。それが魅力ですが、ずっと全開で歌えば、聴く側には濃すぎることもあります。そこでShin Sakiuraと相談しながら声色を引き算し、耳当たりを軽くした。曲の最後も余韻を強く残さず、すっと切る歌い方を選んだそうです。
自分の一番の武器を、いつでも最大にすればいいわけではない。
どこで出して、どこで抑えるか。その判断ができるから、「革命道中」はアイナらしさがありながら、繰り返し聴きたくなる曲になったのだと思います。
BiSHのアイナから、アイナ・ジ・エンドへ
アイナは2015年にBiSHとして活動を始め、2016年にメジャーデビューしました。2021年には全曲を自ら作詞作曲したアルバム『THE END』でソロ活動を本格化し、BiSHは2023年6月に解散しました。
BiSH時代から注目していた僕にとって、ソロになったアイナは、グループから離れて急に別の人になったようには見えません。
BiSHで歌い、踊り、たくさんの舞台に立ってきた。その間に磨かれたものが、ソロになって少しずつ形を変えながら広がっている。「革命道中」のヒットも、突然起きたというより、これまで積み重ねてきたものが大きく届いた結果なのでしょう。
エイベックスの公式情報では、「革命道中」はストリーミング再生3.4億回を突破しています。国内外のチャートにも入り、ソロとして初めてNHK紅白歌合戦に出場しました。
数字だけを見ても、いまのアイナが「元BiSHのメンバー」という紹介だけでは収まらないことが分かります。
それでも番組で話す姿には、完成された大スターという感じだけではなく、迷ったり、自分の声を嫌ったり、周りの人と一緒に曲を作ったりする素の部分がありました。
嫌いだった声が、そのまま武器になる
今回の『日曜日の初耳学』を見て思ったのは、コンプレックスは克服して消さなければならないものではない、ということです。
アイナのハスキーボイスは、普通の声に直されたのではありません。嫌だった声を持ったまま歌い続け、使い方を覚え、いまでは誰にも真似できない武器になりました。
しかも、その武器を振り回すのではなく、ときには抑えることまで覚えた。それが「革命道中」という大きなヒットにつながっています。
BiSHの頃から見てきた僕には、アイナが急に有名になったというより、ようやく多くの人に見つかったという感覚があります。
「革命道中」で初めてアイナを知った人が、BiSH時代の曲や、これまでのソロ作品も聴いてくれたらうれしいですね。
番組で語られたのは、成功したアーティストの華やかな話だけではありませんでした。生まれたときから持っていた声に悩み、それでも手放さず、時間をかけて自分のものにしてきた話です。
だからアイナ・ジ・エンドの歌は、うまいという言葉だけでは説明できないのでしょう。
公式情報
※2026年9月13日の放送内容と公式情報をもとに、自分があとで読み返すためにまとめました。

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