作家との相性なのでしょうか宮本輝作品はスッと心の中に文章が入ってきて心地よい中で読み終わってしまう。主人公はビルの住人であるが、書き手はこのビルの管理人になった八木沢。八木沢はビルの立ち退きのために本社から派遣された。ビルの住人達はそれを分かっているが八木沢に自分たち事、自分たちを育ててくれたパパちゃんと茂木のおじちゃんの事を話す。何かを分かってもらう為に話しているのではなく、このビルから離れることが分かっているから誰かに聞いてもらいたくて話しているように思えた。
このビルの住人達は風変わりな者ばかりで、個性豊かなのがいい。特に市田の峰ちゃんがダッチワイフをお礼にと八木沢に持ってきたのでそれをどうするか気になってしまったが・・・。
八木沢が比呂子から料理の手ほどきを受けて自分で作る場面が何度も出てくるが、そのたびに唾を飲み込んでしまった。この料理を作る場面がいい骨休みになってこの本の面白さを引き立たせているように感じた。
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