EIGHT-JAM 2026年11月1日「愛の情念ソング」歌詞を読み解く面白さ

MUSIC

先週のEIGHT-JAMは、「読み解くと深い 愛の情念ソング特集」でした。

情念ソングと聞くと、昭和歌謡の暗くて重い曲を想像します。中島みゆきの「うらみ・ます」や、今回も紹介された山崎ハコの「呪い」のような世界ですね。

ところが、平成や令和の曲にも情念はたくさんあります。ただ、曲調は明るく、言葉も今の生活に近い。その奥を読み解くと、怒りや執着、嫉妬、諦めきれない気持ちが見えてくる。

今回は草野華余子、吉澤嘉代子、syudouの3人が、歌詞の中に隠れた感情を考察しました。知っている曲でも、見方が変わるとまったく違って聴こえます。考察が面白い回でした。

EIGHT-JAMは好きな番組なので、自分用のアーカイブとして残しておきます。

番組で紹介された情念ソング

アーティスト 楽曲 番組で読み解かれた情念
aiko ばいばーーい 別れの怒りが、自分で前を向く決意へ変わる
コレサワ ライブ終わりに 冒頭から結論を突きつける、強気な恋愛感情
コレサワ 5AM 朝まで続いた別れ話の中で揺れる気持ち
椎名林檎 長く短い祭 若さや美しさの衰えへの焦りと、今を生きる決意
宇多田ヒカル Be My Last 未来の約束より、今すぐ会いたいという衝動
aiko 透明ドロップ きれいな失恋ソングの最後に隠された本音
乃紫 先輩 翻弄される後輩に見えて、実は主導権を握る強さ
ヒグチアイ 玉ねぎ 料理に込めた見えない愛情と、気づかない相手とのすれ違い
阿部真央 ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~ 異常だと分かっていても止められない恋心
私立恵比寿中学 曇天 アイドルに歌わせる大人の恋愛と、ファンをざわつかせる仕掛け
アカシック 私 報われない恋を自覚しながら、自分の生き方として引き受ける
Cocco 強く儚い者たち 約束を破る弱さと、それでも生きていける人間の強さ
山崎ハコ 呪い 言葉にできない感情が、呪いという儀式に変わる

こうして並べると、情念といっても一つではありません。相手を恨む曲だけではなく、別れたあとに自分を立て直す曲、言えない思いを抱えた曲、自分の危うさまで分かったうえで歌う曲もあります。

aiko「ばいばーーい」は、怒りで終わらない

最初に紹介されたaikoの「ばいばーーい」は、別れの痛みの中にいる女性を描いた曲です。

草野華余子は、タイトルにある長い伸ばし棒や、途中で急に強くなる言葉に、抑えきれない怒りを読み取っていました。

それでも、この曲は相手を責め続けて終わりません。曲を書き終えるころには、自分が少し前を向いている。

番組では、この「少し」を聞いた男性陣が、まだやり直せる可能性があるのではないかと受け取ります。女性陣からすれば、そういう意味ではない。相手のほうを向いているのではなく、自分の人生を前へ進め始めたということでした。

同じ言葉を聞いても、受け取り方がここまで違う。歌詞の考察だけでなく、スタジオで意見が分かれるところも面白かったですね。

さらに、恋愛中の主人公を描いていた歌が、最後に曲を書いているaiko自身の視点へ戻る。物語を聴いていたはずが、急に現実の体験へつながるような怖さがあります。

aikoは恋愛の細かな感情を言葉にするのがうまい人ですが、番組で分解してもらうと、その作り方まで少し見えた気がしました。

「透明ドロップ」の最後に残された一言

aikoからは「透明ドロップ」も紹介されました。

歌詞だけを読むと、別れを告げられた女性の悲しみを描いた失恋ソングです。しかし、音源の最後には歌詞カードに載っていない言葉が入っています。

それによって、ただのきれいな別れではなく、相手の嘘や浮気に気づいていたことが分かる。

曲を最後まで聴かなければ分からない仕掛けです。配信で好きな部分だけを聴くことも増えましたが、アルバムの一曲として最後まで聴いた人にだけ、本音が聞こえてくる。

明るい曲調の中へ、最後に小さく毒を落とす。これも新しい情念ソングなのでしょう。

椎名林檎「長く短い祭」は、今がいちばん若い

椎名林檎と浮雲の「長く短い祭」は、夏祭りを思わせる華やかな曲です。

普通に聴けば、人生の短さと今を楽しむことを歌った曲に聞こえます。吉澤嘉代子は、そこに若さや美しさが衰えていくことへの、女性特有の焦りを読み取っていました。

年齢を重ねることへの不安はあります。しかし、考えてみれば、今この瞬間がこれからの人生でいちばん若い。

だから、焦りを暗いまま抱えるのではなく、どこへ行こう、何をしようと動き出す力に変える。情念を爽快なダンスチューンで包んでいるところが椎名林檎らしいですね。

僕も60歳を過ぎています。「今がいちばん若い」と考えると、残りの時間の見え方が少し変わります。女性特有の歌詞として紹介されましたが、年齢を重ねた人なら、それぞれの立場で感じるところがある曲だと思います。

宇多田ヒカル「Be My Last」の二行

草野華余子が「Be My Last」で注目したのは、Cメロの最後にある短い二行でした。

いつか結ばれる未来を待つより、今夜わずかな時間でも会いたい。

将来の幸せを考えれば、会わないほうがいいのかもしれません。それでも、今の気持ちを抑えられない。理屈では整理できない感情が、わずかな言葉の中に入っています。

syudouは、会いたいなら言ってくれれば会うと話します。ヒコロヒーは、こういう女性は言わないのだと返す。

ここでも、同じ歌詞に対する男女の違いが出ていました。言わなければ分からないという考えも正しい。でも、言えないから歌になる。そのままならないところが情念なのだという話には納得しました。

日常に溶けたヒグチアイ「玉ねぎ」

今回、いちばん日常に近い情念ソングは、ヒグチアイの「玉ねぎ」だったと思います。

恋人の帰りを待ちながら、時間をかけて玉ねぎを炒める。相手が帰らなければ料理は冷め、温め直せばいいと言われる。

でも、問題は料理の温度ではありません。

時間をかけて作ったこと。帰りを待っていたこと。一緒に食べたいと思っていたこと。その目に見えない愛情に気づいてほしい。

完成したカレーを見ただけでは、玉ねぎにかけた時間は分かりません。二人のすれ違いを、特別な言葉ではなく、台所にある玉ねぎで表しているところがいいですね。

大げさな恨みではなく、毎日の中で少しずつ積もっていくもの。平成・令和の情念ソングは、こういう形でも描けるのだと思いました。

ポップに歌うほど怖くなる

阿部真央の「ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~」は、好きな人へ近づこうとする行動が、少しずつ許される範囲を越えていきます。

歌っている本人も、それが普通ではないと分かっている。それでも止められない。

曲調が重くないため、最初は少し笑って聴けます。しかし、具体的な場所や時間、相手の家族まで出てくると、だんだん怖くなる。

暗く歌えば、最初から危険な歌だと分かります。明るく軽く歌うからこそ、感情の深さが後から見えてくる。今回の特集を象徴する一曲でした。

乃紫の「先輩」も、表面だけを追うと年上の女性に振り回される後輩の歌です。しかしsyudouは、実際には後輩のほうが主導権を握っているのではないかと読み解いていました。

先月の女性ボーカリスト特集で乃紫が出演したばかりなので、続けて曲が紹介されたのもうれしかったですね。

「呪い」から現在まで、感情そのものは変わらない

最後に紹介されたのが、山崎ハコの「呪い」でした。

釘を打つ音を繰り返しながら、整理できなくなった感情が呪いという行動へ変わっていく。昭和の元祖情念ソングと呼ばれるのも分かります。

平成・令和の曲は、言葉が日常に近くなり、自分を客観的に見る視点も増えました。女性が怒りや欲望を、そのまま言葉にしやすい時代にもなっています。

それでも、人を好きになって苦しくなること、相手に気づいてほしいのに言えないこと、別れたいのに離れられないことは、昔から変わらないのでしょう。

変わったのは感情ではなく、その見せ方なのかもしれません。

今回のEIGHT-JAMは、曲を聴いて終わるのではなく、なぜこの一行が残るのか、なぜ明るい曲なのに怖く感じるのかを、作り手が言葉にしてくれました。

知っていた曲も、次に聴くときは歌詞の違うところが耳に入るはずです。新しい曲を知る回でもあり、知っている曲を聴き直したくなる回でもありました。

番組情報・前回記事

※2026年11月1日放送のEIGHT-JAMと文字起こしをもとに、自分用の視聴記録としてまとめました。

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