ストロングロフト時代に生まれた新しい選択肢 ― ボーケイ「44F」がもたらす変化

Golf

ゴルフクラブの流れが、またひとつ大きく動きました。
タイトリストのVokey WedgeWorksから登場した「SM10 44Fグラインド」。従来、Vokeyのウェッジは46度から62度までが基本のラインナップでしたが、その枠を破って“44度”が追加されたのです。

一見するとロフトが2度増えただけの新製品に思えるかもしれません。しかし、この44度という設定には、今のゴルフ環境を象徴する大きな意味が込められています。

「飛び系アイアン」とウェッジの間に生まれた“隙間”

ここ数年、アイアンのロフト設定が年々ストロング化しています。かつて48度前後だったピッチングウェッジ(PW)は、今や43〜45度が当たり前。飛距離性能が上がったことで、7番アイアンが昔の6番アイアンほど飛ぶ時代になりました。

その一方で、ウェッジは従来の50度からスタートするケースが多く、PWとウェッジの間にロフト差が生まれ、距離の階段がガタガタになりやすい問題がありました。

たとえば、
「PWが43度 → AWが50度」
この7度差をどう埋めるか。
多くのアマチュアが感じていた“距離のバラつき”は、まさにこのロフトギャップが原因のひとつです。

この問題を解消するために誕生したのが、44Fという新しい選択肢です。

“ウェッジとしての44度”という価値

44Fは、ただロフトが44度というだけではありません。
WedgeWorksならではの打感、操作性、そしてバウンス設計が組み込まれた「ウェッジ設計の44度」なのです。

フルショットの距離帯でしっかりとスピンが入り、グリーンを狙うショットに必要な高さと止まり方を作れる。バンプ&ランのような低く出して転がすアプローチにも適し、ピッチショットではボールを潰した感触とともにスピンがかかる。まさに、アイアンでは出せない“スコアメイクの武器”になる1本といえます。

最近では、アイアンセットに「7番〜PWまでの4本」しか入れない流れが進んでいます。飛距離性能が高くなった分、ロング・ミドルアイアンの役割分担が変わり、下の番手ほどウェッジの役割が重要になってきました。「飛び系アイアン × スピン系ウェッジ」という組み合わせは、今後さらに一般化していく流れにあります。

その潮流の中での44F登場。これは、まさに時代に合わせた必然とも言えるでしょう。

距離を“埋める”クラブから、“点を取る”クラブへ

ゴルフにおけるウェッジは、スコアに直結するクラブです。
セカンドショットで狙った距離をきちんと打てるかどうか。
グリーン周りで寄せワンを拾えるかどうか。

44Fは、ただ番手間を埋めるクラブではなく、スコアメイクに必要なショットの質を高めるためのウェッジです。

これまでのアイアンのPWでは、フルショットを打った時にスピンが足りず、グリーンに乗っても止まらないという悩みを抱えるゴルファーは多くいました。特に飛び系アイアンのPWは、フェース設計上、スピンよりも飛距離性能が優先されがちです。

その点、44Fは「ウェッジらしい打感」「必要な高さ」「止まるスピン」を兼ね備えています。フルショットの安心感に加え、視覚的にもウェッジらしい顔で構えやすく、自信を持って狙っていけるクラブに仕上がっています。

時代が変われば、セッティングも変わる

クラブセッティングは、時代によって常識が変化してきました。
かつては3番アイアンが当たり前にバッグに入っていましたが、今ではユーティリティやショートウッドが主流。これと同じ変化が、ウェッジにも起きようとしています。

「PWまでアイアン」を卒業し、
「PWの領域にもウェッジを入れていく」という発想。

これは、トッププロだけでなくアマチュアにとっても理にかなった流れです。とくにスコアを伸ばしたいゴルファーにとって、ウェッジの選択肢が増えることは大きな恩恵になります。

最後に

44Fの登場は、“ストロングロフト時代のコース攻略”に対するひとつの答えだと思います。飛び系アイアンでしっかり距離を稼ぎ、ウェッジで止める。この分業スタイルは確実に広がっていくでしょう。

クラブは時代とともに進化します。
その進化を取り入れながら、自分に合ったセッティングを選択すること。
それが、これからのゴルフにおいて大切な視点になっていくのではないでしょうか。

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