自問自答する権介、何事にも執着しない権介という人間に非常に魅力を感じる。常に力が入っておらずなすがままに生きる姿がまたいい。花村萬月氏の作品には人間の成長過程でも心の変化を描くものと、許容する心をもった人間を描くものがある。今回も村で蔑ろにされながら生き続けている茂吉という少年が成長していく過程を描き、また主人公の権介はさらに許容の境地に入っていく。762ページという普通の2冊分の厚みがあるがこの厚みを楽しみながら読めるのが花村作品のいいところ。早く先を読みたいが、今の権介の胸中を自分なりに咀嚼しながら読むのがまた楽しい。
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