掛金はいくらにするべきか?
無理なく続けるための考え方
iDeCoを考え始めた人が、申し込みの直前で急に迷いやすくなるのが、掛金をいくらにするかという問題です。制度の説明を読んでいるあいだは前向きでも、いざ金額を決める段階になると、「少なすぎても意味がないのでは」「せっかくなら上限までやるべきでは」と考えてしまい、そこで手が止まることがあります。けれど、iDeCoで本当に大事なのは、最初から大きな金額を入れることではなく、無理なく続けられる形で始めることです。iDeCoの掛金は月5,000円から始められ、1,000円単位で設定できます。つまり、最初から大きく構えなくても制度に参加できるようにつくられています。
まず押さえておきたいのは、「いくらまで掛けられるか」と「いくら掛けるべきか」は同じではないということです。制度上の上限額は、あなたの立場によって決まっています。現行では、第1号加入者は月6.8万円、第2号加入者のうち企業年金等に加入している人は月2万円、企業年金等に加入していない人は月2.3万円、第3号加入者は月2.3万円です。さらに、2026年12月1日施行予定の改正では、第2号加入者の考え方が整理され、企業年金との共通拠出限度額が月6.2万円に引き上げられ、第1号加入者と第4号加入者については月7.5万円に引き上げられる予定です。
ただ、本当に重要なのは、制度上の上限を暗記することではありません。上限はあくまで「そこまでなら制度上は可能」という線であって、「そこまで入れるのが正解」という意味ではないからです。実際には、家計の中で毎月気持ちよく続けられる額を決めるほうがずっと大切です。iDeCoは長期で積み立てる制度なので、最初の数か月だけ頑張れても、その後に苦しくなってしまえば続きません。制度上は掛金額を変更したり、拠出を止めたりすることもできますが、掛金額の変更は原則として1年に1回です。だからこそ、最初から背伸びしすぎないことが大切です。
考え方としては、まず「理想額」ではなく「継続額」から入るほうが失敗しにくいです。言い換えると、「節税効果が最大になる金額」から逆算するのではなく、「これなら毎月出しても気持ちが重くならない金額」から考えるほうが現実的です。iDeCoは確かに税制優遇がありますが、節税のために生活を圧迫してしまうと、制度そのものが負担になります。老後資金づくりは短距離走ではなく、途中でやめたくならない形にすることのほうが大事です。iDeCo公式サイトも、ライフスタイルに合わせた無理のない負担で老後に備える制度だと案内しています。
ここで一つ目安になるのは、「今の生活の中で、なくなると困るお金ではないか」という感覚です。毎月の支出の中には、固定費のように必ず出ていくお金もあれば、月によってぶれるお金もあります。iDeCoの掛金は、なるべく後者の波に左右されにくい額にしたほうが続けやすくなります。たとえば、「今月はちょっと厳しいな」と感じる月でも無理なく出せる額なら、その掛金は長く続く可能性が高いです。逆に、「普通の月なら払えるけれど、少し出費が重なると苦しい」という額は、制度上は問題なくても、心理的には重くなりやすいです。
もうひとつ大事なのは、iDeCoのお金は原則として老後資金であり、気軽に引き出すためのものではないという点です。だから、手元資金に余裕がない状態で掛金を高く設定してしまうと、あとから不安になりやすくなります。申し込み前に確認しておきたいのは、「この金額を積み立てても、生活防衛資金や急な出費への備えは残るか」ということです。iDeCoは始めたこと自体が偉い制度ではなく、自分の生活を守りながら育てる制度です。そう考えると、最初は少し控えめでもまったく問題ありません。
また、金額を決めるときは、「いまの自分」と「これからの自分」を分けて考えると楽になります。いまはまだ不安があるなら、小さく始めればいいのです。月5,000円から始められるのは、そのためでもあります。あとから家計に余裕が出たり、制度への理解が深まったりしたら、見直す余地があります。最初から完璧な金額を当てにいく必要はありません。むしろ、完璧に決めようとするほど始めにくくなります。始められる額で始めて、続けながら整える。この考え方のほうが、iDeCoには合っています。
会社員や公務員の人は、勤務先の制度状況によって上限の見え方が変わるため、「自分はいくらまでできるのか」を先に確認する必要があります。一方で、自営業やフリーランスの人は上限が比較的大きく見えるかもしれませんが、それでも上限いっぱいを最初から目指す必要はありません。制度上できる額と、生活の中で続けられる額は別だからです。専業主婦(夫)の人も同じで、家計全体の中で無理がないことが前提になります。立場ごとに上限は違っても、「続けられる額から決める」という原則は共通しています。
さらに、少し見落とされやすい点として、iDeCoには掛金納付の都度かかる手数料があります。公式の加入手続きページでは、加入者は掛金納付の都度105円の納付手数料を負担すると案内されています。大きな額ではありませんが、月5,000円のような少額から始める人にとっては、「とにかく最小額なら十分」と雑に考えるより、自分が納得して積み立てられる額を考える材料になります。
iDeCoの掛金は、上限から決めるものではなく、継続できる額から決めるものです。制度上いくらまで可能かを確認したうえで、その中から「これなら生活に無理がない」と思える額を選ぶ。それが、いちばん現実的で、いちばん続きやすい決め方です。最初の金額が小さいことを気にする必要はありません。長く続く掛金のほうが、途中で苦しくなる大きな掛金より、ずっと価値があります。
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