Xを見ていたら、「パソコンの中にデータを中国のサーバーへ送るチップが入っている」という趣旨の投稿が流れてきました。
どこまで根拠がある話なのかは分かりません。ただ、わが家で使っているパソコンはASUSとHPです。気になったまま使い続けるより、実際の通信やセキュリティの状態を自分で確認してみることにしました。
調べたのは、ASUS Vivobook 16 X1605VA-I9321WSとHP OmniDesk M02-0001jpです。結論から書くと、今回の確認範囲では、中国のサーバーへデータを送り続けるような怪しい通信は、どちらからも見つかりませんでした。
ただし、ASUSではBIOSが古いままになっていました。噂の真偽を追うつもりで始めた確認でしたが、実際に対処が必要だったのは、もっと身近なBIOSの更新でした。
今回確認したこと
確認したのは、主に次の内容です。
- 外部へ向いているTCP通信
- 通信が確立している接続先
- 直近のDNSキャッシュ
- メーカー関連サービスの動作状況
- BIOSのバージョン
- Secure BootとTPMの状態
- BitLockerの状態(ASUSのみ)
通信は、その瞬間の状態に加えて約60秒間の変化も見ました。DNSキャッシュも確認し、メーカー名が付いたサービスがある場合は、存在するだけで判断せず、実際に外部通信をしているかを分けて見ています。
ここは大切なところです。Windowsより下で動くUEFIやBIOS、TPM、メーカー製サービスが存在することと、それがバックドアであること、さらに中国へデータを送っていることは同じではありません。間を飛ばさず、観測できた事実だけで考える必要があります。
ASUS Vivobook 16では怪しい常時通信は見つからなかった
ASUS Vivobook 16では、瞬間的な確認と約60秒間の監視のどちらでも、ASUS関連プロセスによる怪しい外向き通信は見つかりませんでした。
DNSキャッシュには、ASUSの公式ドメインと思われる接続先が残っていました。メーカーのサポート機能や通知機能が公式サーバーへ接続すること自体は不自然ではありません。また、GlideXに関係する通信は127.0.0.1、つまりパソコン内部だけで使われるローカル通信でした。
少なくとも今回確認した時間帯には、正体の分からない中国のサーバーへ通信し続けているという状態は確認できませんでした。
本当に見つかった問題は、古いBIOSだった
ASUSで気になったのは通信ではなく、BIOSのバージョンでした。
確認時のBIOSはX1605VA.305で、日付は2023年8月17日。ASUS公式サポートページを見ると、現在公開されている最新版は313でした。途中の307にはIntelのセキュリティ更新も含まれています。
そこで、ASUS公式からWindows用のBIOS更新プログラムをダウンロードしました。念のためファイルのSHA-256を計算し、公式ページに掲載されている値と完全に一致することも確認しています。
BIOS更新の前には、BitLockerの回復キーを確認し、保護を一時停止しました。メーカー提供のファームウェアを更新するときは、BitLockerが回復キーを要求することがあるためです。電源も接続し、更新中に電源を切らない状態にしてから実行しました。
更新後はBIOSがX1605VA.313になり、BitLockerも「完全に暗号化」「保護オン」の状態へ戻っていることを確認しました。
結果として、ASUSは怪しい通信への対処ではなく、普通のセキュリティ対策として必要なBIOS更新ができました。調べてみて一番大きかった収穫は、ここだったと思います。
HP OmniDeskはBIOS F.15で最新の対策を確認できた
HP OmniDesk M02-0001jpについても、瞬間的な外部接続と約60秒間の変化を確認しました。HP関連の外向きTCP通信や、通信が確立したままの接続は見つかりませんでした。DNSキャッシュにも、今回の確認時点ではHP関連の接続先は残っていませんでした。
HP Touchpoint Analytics Client Serviceというサービスは動いていました。ただ、サービスが常駐していることだけを理由に、データを外部へ送っているとは判断できません。今回の観測中、このサービスによる外部通信は確認できませんでした。
BIOSはF.15で、日付は2026年3月16日。HPが2026年に公開したIntelプロセッサー・ファームウェアとIntelチップセット・ファームウェアのセキュリティ情報では、OmniDesk M02-0xxxの対策済み最低バージョンがF.15とされています。使っているOmniDeskは、この条件を満たしていました。
Secure Bootは有効、TPMも存在・準備・有効化・アクティブの各項目が正常でした。なお、HPについては今回BitLockerの状態までは確認していません。そこは確認済みの項目と混ぜず、未確認として残しておきます。
2台の確認結果
| 確認項目 | ASUS Vivobook 16 | HP OmniDesk |
|---|---|---|
| 怪しい常時通信 | 観測範囲では検出せず | 観測範囲では検出せず |
| 中国サーバーへの不審な通信 | 観測範囲では検出せず | 観測範囲では検出せず |
| メーカー関連通信 | 公式ドメインとローカル通信を確認 | 観測中の外部通信なし |
| Secure Boot | 有効 | 有効 |
| TPM | 正常 | 正常 |
| BIOS | 305から313へ更新 | F.15 |
| BitLocker | 完全暗号化・保護オン | 未確認 |
「見つからなかった」は「絶対にない」ではない
今回の確認で、2台から怪しい通信は見つかりませんでした。ただし、これは「このパソコンは将来も含めて一度も不審な通信をしない」と証明したことにはなりません。
見たのは瞬間的な接続、約60秒間の監視、DNSキャッシュなどです。すべての通信パケットを長期間保存して解析したわけでも、専門機関によるフォレンジック調査をしたわけでもありません。
そのため、正確な表現は「今回観測した範囲では見つからなかった」です。一方で、根拠のはっきりしない投稿だけを見て、搭載チップやメーカー製サービスをすぐにバックドアと決めつける材料もありませんでした。
噂より、いま確認できる対策をする
今回のことで感じたのは、刺激の強い噂を追い続けるより、自分のパソコンの状態を一つずつ確認する方が役に立つということです。
BIOSを最新にする。Secure BootとTPMを確認する。BitLockerを使うなら回復キーを保管する。Windows Updateを続ける。大切なファイルはバックアップする。こうした普通の対策の方が、現実のリスクを減らしてくれます。
ASUSでは、実際に古いBIOSが見つかり、最新版へ更新できました。HPでは、現在のBIOS F.15が2026年の公式セキュリティ情報で求められるバージョンを満たしていることを確認できました。
最初は少し不安でしたが、最後は「怪しいかもしれない」で終わらず、自分のパソコンの状態を把握できました。こういう確認は、噂を信じるためでも否定するためでもなく、安心して使い続けるためにするものだと思います。
確認した公式情報
- ASUS:Vivobook 16 X1605VA BIOS・ファームウェア
- HP:Intel Processor Firmware Security Update(2026年5月)
- HP:Intel Chipset Firmware Security Update(2026年2月)
- Microsoft:ファームウェア更新時にBitLocker保護を一時停止する方法
- Microsoft:BitLocker FAQ
記載内容は2026年8月時点の確認結果です。BIOSやセキュリティ情報は更新されるため、実際に作業するときは各メーカーの最新情報を確認してください。

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