先日、母から生前贈与の申し出があったので、調べてみたことを記しておきます。
1. 生前贈与とは?
生前贈与とは、本人が生きている間に財産を無償で他人に譲ることを指します。
遺言などの相続とは異なり、生存中の財産移転を意味し、現金・不動産・株式など多様な財産が対象です。
2. 生前贈与のメリット・デメリット
メリット
- 相続税の節税につながる
- 財産を計画的に分散し、遺産トラブルの予防になる
- 生活資金や教育資金の援助が可能
- 贈与者・受贈者双方の安心感が得られる
デメリット・注意点
- 贈与税がかかる可能性がある(年間110万円超)
- 贈与後に贈与者の生活資金不足リスク
- 一度贈与すると原則取り消せない
- 相続開始前3年以内の贈与は相続財産に持ち戻される場合がある
- 贈与の不公平感が家族間トラブルの原因となることも
3. 贈与税の仕組みと基礎控除
- 贈与税は贈与された財産の価値に課税
- 年間110万円までは基礎控除として非課税
- 税率は10%から55%の累進課税
- 申告は贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日までに行う
- 110万円以下の贈与は申告不要
4. 贈与の事実確認方法(現金の場合)
- 贈与は贈与者・受贈者の意思表示による契約で成立
- 現金のやり取りは銀行振込記録や通帳が確実な証拠
- 現金の手渡しの場合は贈与契約書や領収書の作成が重要
- 税務署は証拠書類で贈与の実態を調査
- 証拠が不十分な場合、贈与の否認リスクあり
5. 基礎控除110万円の期間
- 基礎控除は「暦年単位(1月1日~12月31日)」で計算
- 1年間の贈与総額から110万円を控除し課税対象額を決定
- 例:同年1月と11月に贈与があれば合算して課税判断
- 複数年に分けて贈与することで節税可能
6. 贈与税の申告について
- 申告は贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日に受贈者の住所地の税務署に提出
- 110万円以下なら申告不要
- 申告遅延は延滞税・加算税が課されることがあるため注意
- 必要書類は贈与契約書、通帳コピーなど
7. 相続開始前3年以内の贈与の持ち戻し
- 被相続人が亡くなる直前3年以内に行った贈与は相続財産に加算され、相続税の対象に
- これは節税目的の直前贈与を防ぐための制度
- 例外として教育資金や住宅取得資金の非課税制度など一部特例も存在
8. 親族間贈与の非課税特例
- 教育資金の一括贈与の非課税(最大1,500万円、30歳未満の子孫対象)
- 住宅取得資金贈与の非課税(契約時期や住宅種類により1,000万円以上も可)
- 結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度(期間限定)
- 相続時精算課税制度(60歳以上の親が20歳以上の子孫へ2,500万円まで非課税)
- 生活費などの日常的扶養にかかる資金贈与も非課税とされる場合あり
9. 相続時精算課税制度
- 贈与者が60歳以上、受贈者が20歳以上の子や孫への贈与で利用可
- 贈与額2,500万円までは贈与税なしで贈与可能
- 2,500万円超は一律20%の贈与税がかかる
- 贈与した財産は将来の相続財産に加算し相続税と合算して精算
- 一度選択すると暦年贈与の基礎控除110万円は使えなくなる
- 申告が必須で複雑なため専門家推奨
10. 住宅ローン返済のための贈与
- 住宅ローン返済資金としての贈与は住宅取得資金の非課税特例の対象外となることが多い
- 110万円を超える贈与は通常の贈与税課税対象になるため注意
まとめ
生前贈与は相続税対策や家族支援に有効な制度ですが、贈与税の基礎控除や特例の仕組み、申告義務、証拠保全などのルールを正しく理解し、計画的に活用することが重要です。
特に大きな財産移転を考える場合は、相続時精算課税制度や親族間非課税特例の活用も検討し、税務署や専門家に相談することを強くおすすめします。
No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
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