今月の総括(リスク信号:黄)
AI需要によるデータセンターの電力消費は急増し続けています。一方、発電・送電インフラの拡張は進んでいるものの遅れが目立ち、需給ギャップの懸念はむしろ強まっています。
次の3~6か月にかけて、局地的には「赤」に移行する可能性もあるため注意が必要です。
1. 電力需要の最新動向
- 世界のAIデータセンター電力消費は今後数年で約165%増加と予測。
- 米国ではAI専用データセンター負荷が**2024年の約4GW → 2035年に123GW(30倍)**に達すると試算。
- 米上位35電力会社の75%が「データセンター需要増」を報告し、2030年には発電量の11~15%を占める見込み。
- MetaがCoreWeaveと140億ドル規模の長期契約を結ぶなど、ハイパースケーラーの投資は一段と拡大。
2. 発電・送電インフラの対応
- 米国の電力会社は2025~2029年に1.1兆ドル超の設備投資を計画、2025年CAPEXは前年比+22%。
- カリフォルニアではPG&Eが730億ドルの送電網投資計画を発表。
- 送電・配電市場は前年比約10%成長も、接続待ち(インターコネクション)遅延は深刻。
3. 電力価格と規制
- データセンター集中地域では卸電力価格が過去5年で最大267%上昇。
- ペンシルベニアでは電気料金が前年比+11%、データセンター接続費(約4.9億ドル)が料金転嫁され議論を呼んでいる。
- ルイジアナ州ではMetaが30億ドルのガス発電所建設費の半分を負担する異例の事例が発生。
4. ビッグテックの自前電源
- Meta:ルイジアナに100億ドル規模のデータセンターを建設、併設ガス発電+送電線を一部自社負担。
- Microsoft:2028年のスリーマイル島原発再稼働に20年契約で電力購入。
- 新興REITやデベロッパーは、核融合・小型モジュール炉(SMR)や太陽光+蓄電のハイブリッドモデルを計画。
5. GPU効率と冷却技術
- H100 GPUノードはTDP10.2kWに対し平均7.6kWで稼働、変動が大きく電力ピーク管理が課題【turn0academia42】。
- NVIDIAは800V直流給電+液冷システムを導入予定で、ピーク電力を最大30%削減できる新設計を進めている。
- ただし、顧客による「電力不足による設置延期」のリスクは依然残る。
投資家への示唆
- 半導体株:需要は旺盛だが、供給インフラの制約で売上の伸びが一時的に鈍化する可能性。
- 電力株:設備投資負担が増大、短期的には収益圧迫も、中長期で安定成長セクターに。
- 再エネ・原発関連株:大規模データセンターとの長期契約増加が追い風。
リスク信号(3~6か月)
- 黄(注意) → 一部地域では赤の兆候
特に米国のテキサス、バージニア、ルイジアナでは需給逼迫リスクが高まっている。
来月のウォッチポイント
- PJMやCAISOなど接続待ち(インターコネクション)進捗
- ハイパースケーラーの決算で「電力制約」に関する言及があるか
- テキサス・バージニア・ルイジアナなど電力ひっ迫州の設備投資ニュース
✍️ このレポートは毎月更新します。
次回(2025年10月号)は、電力価格の上昇圧力とデータセンター新設の進捗状況を重点的にフォロー予定です。
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