- なぜTour ADはトッププロとアマチュアに選ばれ続けるのか?
- グラファイトデザイン Tour AD 進化の10年史:2015-2025年モデル徹底解説
- Tour AD 10年間の進化トレンドとマトリクス分析
なぜTour ADはトッププロとアマチュアに選ばれ続けるのか?
ゴルフの世界において、クラブの性能を最大限に引き出す要素は何かと問われれば、多くの専門家やトッププレイヤーは「シャフト」の重要性を挙げるだろう。その中でも、株式会社グラファイトデザインが展開する「Tour AD」シリーズは、長年にわたり日本のプロゴルフツアーで圧倒的な使用率を誇り、トッププロから熱心なアマチュアまで、幅広い層のゴルファーから絶大な信頼を寄せられている。
その成功の根幹には、ブランド名に込められた哲学がある。「Tour AD」とは、「Tour(ゴルフトーナメントツアー)」で勝つための性能、すなわち「Accuracy(正確性)」と「Distance(飛距離)」を両立させるという揺るぎない信念の現れだ。この哲学は、埼玉県秩父市に構える自社工場での一貫生産体制、いわゆる「MADE IN CHICHIBU」によって支えられている。徹底した品質管理と、ツアーの現場で戦うプレイヤーからの絶え間ないフィードバックが、毎年革新的なモデルを生み出す原動力となっているのだ。
「クラブが合わないという場合、原因はほとんど『シャフトが合わない』ことにあると言えます。シャフト選びによって、飛距離も方向も、安定性もすべて高めてくれることが期待できるのです。」
この言葉が示すように、シャフトは単なる棒ではなく、ゴルファーのスイングとヘッドの性能を繋ぐ、最も重要なインターフェースである。グラファイトデザインは「100人いれば、100通りのベストなシャフトがある」という方針のもと、常に前作とは異なる性能を持つシャフトを市場に送り出し、ゴルファー一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出すことを目指してきた。
本記事では、クラブヘッドのテクノロジーが劇的に進化し、ゴルファーのスイング理論も多様化した2015年から2025年に至る10年間に焦点を当てる。この期間にリリースされたTour ADシリーズの各モデルを時系列で丹念に追い、その技術的背景、性能特性、そして市場での評価を深く掘り下げていく。GPの登場から最新のGCまで、一本一本のシャフトがどのような思想で生まれ、どのような進化を遂げてきたのかを解き明かすことで、読者諸氏が自らのゴルフを新たな高みへと導く「最適な一本」を見つけ出すための、信頼できる羅針盤となることを目指す。
グラファイトデザイン Tour AD 進化の10年史:2015-2025年モデル徹底解説
ここからは、2015年から2025年にかけて登場したTour ADの主要モデルを、発売された順に一つずつ詳細に分析していく。各モデルがどのような時代背景と技術的要請のもとに開発され、どのような個性を持つに至ったのか。その進化の軌跡を辿る旅に出よう。
Tour AD GP (2015年10月発売)
コンセプト:「GREAT PERFORMER」— 先端高剛性が生む、粘りと操作性
2015年10月9日に登場した「Tour AD GP」は、その名の通り「偉大なパフォーマー」を目指して開発されたシャフトである。このモデルの最大の特徴は、シャフト先端部分を著しく高剛性化したことにある。当時のドライバーヘッドのトレンドであった低スピン化と高慣性モーメント化に対応し、インパクト時のヘッドのブレや当たり負けを抑制。これにより、ゴルファーのパワーをロスなくボールに伝え、操作性とコントロール性に優れた「粘り系」のフィーリングを追求した。
技術的特徴と性能
GPシリーズは、手元側の剛性を適度に保ちつつ、中間部から先端部にかけて剛性を高める設計を採用。特に先端部の剛性はシリーズの中でも際立っており、これが叩きに行っても左へのミスが出にくいという特性に繋がっている。キックポイントは中元調子に分類され、シャフト全体が一体となってしなり戻る感覚、いわゆる「粘り」を強く感じられる。ユーザーレビューでは「叩きに行っても良し、ミート重視で軽く打ちに行っても良しで不動のエースシャフトです」といった評価が見られ、ヘッドの追従性の高さを評価する声が多い。弾道は、吹け上がりを抑えた力強い中弾道が特徴で、スピン量を減らしてランで飛距離を稼ぎたいゴルファーに適している。
評価とターゲットゴルファー
Tour AD GPは、その特性から主にプロや上級者、特にパワーヒッターから高い評価を受けた。自分でボールを捕まえる技術があり、シャフトには安定性と操作性を求めるゴルファーにとって、GPは意のままに弾道をコントロールできる頼れる武器となった。一方で、アマチュア・中級者にとっては、ある程度のヘッドスピード(43m/s以上が目安)が求められる、ややハードなモデルと言える。ボールが捕まりにくいと感じるゴルファーや、シャフトのしなりで飛ばしたいタイプのゴルファーには、オーバースペックになる可能性があった。
スペックと価格
発売当時のメーカー希望小売価格は43,200円(税込)。50g台から80g台まで幅広い重量帯がラインナップされ、多くのゴルファーのニーズに応えた。
モデル | フレックス | 重量(g) | トルク(deg) | キックポイント |
---|---|---|---|---|
GP-5 | R2 | 55 | 4.3 | 中元 |
R1 | 56 | 4.3 | ||
S | 57 | 4.3 | ||
GP-6 | SR | 64 | 3.1 | |
S | 66 | 3.1 | ||
X | 67 | 3.1 | ||
GP-7 | S | 74 | 2.9 | |
X | 76 | 2.9 | ||
GP-8 | S | 86 | 2.6 | |
X | 88 | 2.6 |
※データはgolf-kt.com、my caddie等の情報を基に再構成。
Tour AD TP (2016年10月発売)
コンセプト:「Tour Proven」— 安定性を極めた、DIの正統進化
2016年10月6日、Tour ADシリーズに新たな歴史を刻む「Tour AD TP」が投入された。TPとは「Tour Proven」、すなわちツアーでその性能が証明済みであることを意味する。このモデルは、長きにわたり多くのプロに愛された名器「Tour AD DI」の特性を受け継ぎつつ、現代のヘッドテクノロジーに合わせて進化させたものと位置づけられている。主な開発コンセプトは、タイミングの取りやすさと振り遅れのミスの軽減であり、安定性を極限まで高めることを目指した。
技術的特徴と性能
TPは、先端部分に高強度素材を採用することで剛性を高め、オフセンターヒット時のヘッドのブレを抑制。これにより、高初速化が進む大型ヘッドの性能を最大限に引き出す。DIシリーズと比較して、手元から中間部のしなりは継承しつつ、全体的な剛性バランスを見直すことで、より弾き感をプラスし、振り遅れにくい設計となっている。キックポイントは中調子。その挙動は非常に素直でクセがなく、ゴルファーのスイングタイプを選ばない万能性を持つ。試打レビューでは「驚きました!このシャフトは、なぜか高水準でいい球が打てます。中弾道の強い球です。タイミングを取りやすくて、ヘッドの挙動も分かりやすい」と絶賛されており、その安定感と扱いやすさが際立っている。
評価とターゲットゴルファー
Tour AD TPは、その卓越した安定性から、発売直後から石川遼プロをはじめとする多くのツアープロが使用し、その名が示す通り「Tour Proven」を体現した。プロ・上級者にとっては、プレッシャーのかかる場面でも信頼して振っていける、方向性を重視するプレイヤーの強力な味方となった。アマチュア・中級者にとっても、そのクセのない特性は大きなメリットとなる。スイングが固まっていないゴルファーや、自分に合うシャフトが分からない「シャフト迷子」にとって、TPは一つの基準点となり得る存在だ。幅広い層にマッチする懐の深さが、このシャフトの最大の魅力と言えるだろう。ただし、2025年3月末をもって販売終了が予定されており、名器を手に入れる機会は残りわずかとなっている。
スペックと価格
発売当時のメーカー希望小売価格は43,200円(税込)。40g台の軽量スペックから80g台のハードスペックまで、幅広いラインナップが用意されていた。
モデル | フレックス | 重量(g) | トルク(deg) | キックポイント |
---|---|---|---|---|
TP-4 | R2 | 46 | 5.7 | 中 |
R1 | 47 | 5.7 | ||
S | 48 | 5.6 | ||
TP-5 | R2 | 54 | 4.4 | |
R1 | 56 | 4.4 | ||
S | 57 | 4.4 | ||
X | 60 | 4.4 | ||
TP-6 | SR | 64 | 3.2 | |
S | 65 | 3.2 | ||
X | 67 | 3.2 | ||
TP-7 | S | 73 | 3.0 | |
X | 75 | 3.0 | ||
TP-8 | S | 85 | 2.6 | |
X | 87 | 2.6 |
※データはgolf-kt.comの情報を基に再構成。
Tour AD IZ (2017年9月発売)
コンセプト:「Into the Zone」— ゾーンに入る、究極のバランス
2017年9月15日、Tour ADシリーズはマットブラックの精悍なコスメを纏った「Tour AD IZ」を発表した。IZは「Into the Zone」の略で、ゴルファーが集中力を高め、最高のパフォーマンスを発揮できる状態へと導くことを意図している。開発コンセプトは、高初速化・低スピン化が進むドライバーヘッドの性能を余すことなく引き出すための「ハイバランス設計」。方向性、直進性、操作性という、ゴルファーが求める要素を高次元で融合させることを目指した。
技術的特徴と性能
IZの剛性設計は、手元部分の剛性を高めて切り返しでの安定感を確保し、中間部分にしなりを持たせることでタメを作りやすく、そして先端剛性を高めることでインパクト時の当たり負けを防ぎ、ボールを強く押し出すという特徴を持つ。この「手元しっかり・中しなり・先硬」というプロファイルは、中元調子らしい粘り感と、弾き系の加速感を両立させることに成功している。結果として、叩きに行っても左へのミスが出にくく、スピン量を抑えた風に負けない強弾道が打ちやすい。多くのレビューで「癖がないシャフト」「万人におすすめできる」と評されており、そのバランスの良さが際立っている。
評価とターゲットゴルファー
Tour AD IZは、その完成度の高さからプロ・上級者を中心に瞬く間に浸透し、根強い支持を得るロングセラーモデルとなった。特に、自分のスイングでボールをコントロールし、安定した弾道でコースを攻略したいゴルファーから絶大な評価を受けている。アマチュア・中級者にとっても、その素直な挙動は非常に扱いやすい。ただし、先端剛性が高いためボールの捕まりはやや控えめ。そのため、スライスに悩むゴルファーよりは、むしろ引っかけを嫌うフェードヒッターや、パワーがあってもしっかり叩けるゴルファーに最適な選択肢となるだろう。
スペックと価格
メーカー希望小売価格は43,200円(税込)。50g台から70g台まで、幅広いスペックが用意されている。
モデル | フレックス | 重量(g) | トルク(deg) | キックポイント |
---|---|---|---|---|
IZ-4 | R2 | 46 | 5.7 | 中元 |
R1 | 47 | 5.7 | ||
S | 48 | 5.6 | ||
IZ-5 | R2 | 54 | 4.4 | |
R1 | 56 | 4.4 | ||
S | 57 | 4.4 | ||
X | 59 | 4.4 | ||
IZ-6 | SR | 63 | 3.2 | |
S | 65 | 3.2 | ||
IZ-7 | S | 73 | 3.1 | |
X | 75 | 3.1 |
※データはグラファイトデザイン公式サイト等の情報を基に再構成。
Tour AD VR (2018年9月発売)
コンセプト:「Vanquish all Rivals」— ライバルを圧倒する、加速感
2018年9月、鮮やかなブルーを基調とした「Tour AD VR」が登場した。VRは「Vanquish all Rivals(すべてのライバルを打ち負かす)」という攻撃的なネーミングが与えられ、そのコンセプトは「強いしなり戻りと、インパクトに向かう加速感」。近年のドライバーヘッドが持つ高初速性能を、シャフトの力でさらに増幅させることを狙った「走り系」モデルである。
技術的特徴と性能
VRの設計思想は、手元部分の剛性を高めることで、パワーヒッターの強い切り返しにもシャフトが負けず、シャープな振り抜きを可能にすることにある。一方で、シャフトの中間から先端にかけてはしなやかさを与え、インパクトゾーンでヘッドが加速する感覚を生み出す。ただし、先端の剛性を極度に落としすぎないことで「走り過ぎ」を抑制し、捕まりの良さとコントロール性を両立させている。キックポイントは先中調子に分類され、高弾道のドローボールが打ちやすい特性を持つ。一体感のある振り心地で、ゴルファーに気持ちよくフィニッシュまで振り抜かせるシャフトだ。
評価とターゲットゴルファー
Tour AD VRは、シャフトの力でボールを捕まえ、飛距離を伸ばしたいゴルファーから高い評価を得た。特に、スライスに悩むアマチュア・中級者や、もっとキャリーで飛ばしたいと考えるゴルファーにとっては、力強い味方となる。クラフトマンからは「シャフトの走りで飛ばしたいが、つかまり過ぎを嫌うゴルファー」にも向いていると評価されており、絶妙なバランス感覚がうかがえる。ただし、パワーヒッターが振ると先端の動きが大きく感じられ、左へのミスを誘発する可能性も指摘されており、評価が分かれる側面も持つ。このモデルもTP同様、2025年3月末での販売終了がアナウンスされている。
スペックと価格
メーカー希望小売価格は44,000円(税込)。40g台から80g台まで、幅広いゴルファーに対応するスペックが揃っていた。
モデル | フレックス | 重量(g) | トルク(deg) | キックポイント |
---|---|---|---|---|
VR-4 | R2 | 46 | 5.7 | 先中 |
R1 | 46 | 5.7 | ||
S | 47 | 5.6 | ||
VR-5 | R2 | 55 | 4.5 | |
R1 | 55 | 4.5 | ||
S | 56 | 4.5 | ||
X | 58 | 4.5 | ||
VR-6 | SR | 63 | 3.2 | |
S | 65 | 3.2 | ||
VR-7 | S | 73 | 3.2 | |
X | 75 | 3.2 |
※データはカッツクラブ等の情報を基に再構成。
Tour AD XC (2019年9月発売)
コンセプト:新素材が拓く「叩ける元調子」の新たな境地
2019年9月、Tour ADシリーズは大きな技術的転換点を迎える。「Tour AD XC」の登場である。このモデルは、飛距離追求型のフェース構造を持つ現代のウッドヘッドの性能を最大限に生かすことを目的に開発された。その最大の特徴は、東レ(現:東レ・カーボンマジック)の最先端カーボン素材を惜しみなく投入したことにある。
技術的特徴と性能
XCは、シャフトの先端から中間部にかけて新素材カーボン「トレカ® M40X」を、そして先端部にはさらに高弾性の「トレカ® T1100G」をシリーズで初めて採用した。「M40X」は高弾性率と高強度を両立させた素材であり、これによりシャフトの剛性を高めつつ、フィーリングを損なわない設計が可能になった。この革新的な素材構成により、インパクト時のパワーロスを極限まで軽減し、先端挙動が劇的に安定。打点のばらつきを抑え、ボール初速の向上を実現した。キックポイントは中元調子で、元調子系特有の粘り感と操作性の高さを持ちながら、強いしなり戻りと加速感が得られる。弾道は低スピン・低弾道の、風を切り裂くような強弾道が持ち味だ。
評価とターゲットゴルファー
Tour AD XCは、そのハードな特性から、特にトッププロや競技志向のハードヒッターから絶大な支持を受けた。松山英樹プロが使用したことでも大きな話題となり、「叩いても絶対に左に行かない」という安心感が、パワーヒッターたちを魅了した。アマチュア・中級者にとっては、シリーズ屈指のハードスペックであり、使い手を選ぶシャフトと言える。ヘッドスピードが速く(45m/s以上推奨)、スピン量が多くて飛距離をロスしているゴルファーや、左へのミスを徹底的に嫌うゴルファーにとっては、大きな武器となり得るだろう。
スペックと価格
メーカー希望小売価格は44,000円(税込)。40g台から80g台までラインナップされているが、特に60g以上のモデルがその特性を色濃く反映している。
モデル | フレックス | 重量(g) | トルク(deg) | キックポイント |
---|---|---|---|---|
XC-4 | R2 | 47 | 5.7 | 中元 |
R1 | 47 | 5.7 | ||
S | 48 | 5.7 | ||
XC-5 | R2 | 54 | 4.3 | |
R1 | 54 | 4.2 | ||
S | 56 | 4.2 | ||
X | 58 | 4.2 | ||
XC-6 | SR | 62 | 3.2 | |
S | 64 | 3.2 | ||
X | 65 | 3.2 | ||
XC-7 | S | 73 | 3.0 | |
X | 75 | 3.0 |
※データはグラファイトデザイン公式サイトの情報を基に再構成。
Tour AD HD (2020年9月発売)
コンセプト:「Hyper Drive」— 大型ヘッドを制する、叩ける弾き系
2020年9月10日、「Tour AD HD」が市場に投入された。HDは「Hyper Drive」を意味し、その名の通り、現代のウッドの主流である「大型・高慣性モーメント」のヘッド性能を最大限に活かすことをコンセプトに掲げた。設計思想としては、かつての名器「Tour AD MT」の現代版とも評され、弾き感とスピンコントロールの両立を目指した「叩ける弾き系」シャフトとして開発された。
技術的特徴と性能
HDは、XCで成功を収めた新素材の組み合わせを継承。シャフト先端から中間部に「トレカ® M40X」、先端部には「トレカ® T1100G」を配置することで、先端から中間部にかけての高剛性化を実現した。これにより、大型ヘッドでもインパクト時に当たり負けせず、安定した先端挙動でパワーロスを極限まで軽減する。キックポイントは中調子。剛性分布としては手元と先端が硬めで、中間部分がしなるプロファイルを持つ。この設計により、しっかりとした振り心地でありながら、クセが少なくタイミングが取りやすいという、絶妙なバランスを実現している。弾道は中弾道・低スピンで、弾き感がありながらも左に行き過ぎず、コントロール性が高いのが特徴だ。
評価とターゲットゴルファー
Tour AD HDは、プロ・上級者からは「弾きと安定性を両立させたい」というニーズに応えるシャフトとして評価された。XCほどハードではなく、TPよりも弾き感があるという、まさに「良いとこ取り」の性能が魅力だ。アマチュア・中級者にとっては、左右のブレを抑え、安定した飛距離を求めるゴルファーに非常にマッチする。レビューでは「普通にスイングするとストレートから軽いフェード。捕まえに行くと程よいドローも打てて安定性も抜群」といった声があり、操作性の高さがうかがえる。ただし、全体的にしっかりとしたシャフトであるため、スペック選びがパフォーマンスを左右する重要な鍵となる。
スペックと価格
メーカー希望小売価格は44,000円(税抜 40,000円)。40g台から80g台まで、幅広いゴルファーに対応する。
モデル | フレックス | 重量(g) | トルク(deg) | キックポイント |
---|---|---|---|---|
HD-4 | R2 | 49 | 5.8 | 中 |
R1 | 49 | 5.8 | ||
S | 50 | 5.7 | ||
HD-5 | R2 | 56 | 4.5 | |
R1 | 57 | 4.4 | ||
S | 59 | 4.4 | ||
X | 61 | 4.4 | ||
HD-6 | SR | 65 | 3.1 | |
S | 66 | 3.2 | ||
X | 68 | 3.2 | ||
TX | – | – |
※データはグラファイトデザイン公式サイト、golf-kt.com等の情報を基に再構成。
Tour AD UB (2021年10月発売)
コンセプト:パワーをダイレクトに伝える、新世代の叩けるシャフト
2021年10月8日、鮮やかなメタリックブルーを纏った「Tour AD UB」がデビューした。このシャフトは、松山英樹プロが東京五輪で使用し、長年愛用したDIからスイッチしたことでゴルフ界に衝撃を与えたモデルである。コンセプトは、高慣性モーメントヘッドの性能をさらに活かし、ゴルファーのパワーをボールに「ダイレクトに伝える」こと。左へのミスを恐れずに強く叩ける、新世代のコントロール系シャフトとして設計された。
技術的特徴と性能
UBの技術的な核心は、先端から先中部にかけての剛性を極限まで高めたことにある。高強度・高弾性炭素繊維「トレカ® M40X」を先端から先中部に、そして「トレカ® T1100G」を先端部に使用することで、ヘッドの無駄な動きを徹底的に抑制。これにより、どれだけ強く叩いてもシャフトが暴れず、エネルギーロスのない強烈なインパクトを可能にする。キックポイントは中調子だが、フィーリングとしてはDIに似た粘り感と、XCのような先端の強さを併せ持つ。弾道は中弾道・低スピンのフェードバイアスで、左へのミスを徹底的に排除する設計となっている。
評価とターゲットゴルファー
Tour AD UBは、まさにトッププロやハードヒッターのために作られたシャフトと言える。松山英樹プロや中島啓太選手(アマチュア優勝時)が使用したことからも、その性能の高さは証明済みだ。左を気にせず振り抜きたい、自分のパワーでボールをコントロールしたいと考える上級者にとって、これ以上ない選択肢となる。アマチュア・中級者にとっては、引っかけのミスに悩むゴルファーには有効な処方箋となり得る。あるユーザーは「DIは冬用、UBは夏用で使い分けできそう」とコメントしており、左に行きにくい特性がゴルフをシンプルにしてくれると評価している。しかし、ボールを捕まえたいゴルファーや、シャフトのしなりで飛ばしたいゴルファーには、かなりハードに感じられるだろう。
スペックと価格
メーカー希望小売価格は44,000円(税込)。40g台から80g台までラインナップされている。
モデル | フレックス | 重量(g) | トルク(deg) | キックポイント |
---|---|---|---|---|
UB-4 | R2 | 45 | 5.5 | 中 |
R1 | 47 | 5.5 | ||
S | 48 | 5.5 | ||
UB-5 | R2 | 54 | 4.4 | |
R1 | 56 | 4.4 | ||
S | 57 | 4.4 | ||
X | 59 | 4.4 | ||
UB-6 | SR | 63 | 3.2 | |
S | 65 | 3.2 | ||
X | 66 | 3.2 | ||
UB-7 | S | 74 | 3.0 | |
X | 75 | 3.0 |
※データはグラファイトデザイン公式サイト、ゴルフおじさんの情報を基に再構成。
Tour AD CQ (2022年10月発売)
コンセプト:「ConQuest」— 勝利を掴む、鞭のような加速感
2022年10月7日、ブラックとゴールドのシックなデザインを纏った「Tour AD CQ」が発売された。CQは「ConQuest(征服)」を意味し、コースを、そして勝利を征服するための武器として開発された。近年の中元〜元調子系のラインナップが増える中、CQは先調子系を好むユーザーの声に応える形で登場。コンセプトは「鞭のようなしなり感、インパクトへの加速感」であり、シリーズ屈指の捕まり性能を持つ「走り系」シャフトである。
技術的特徴と性能
CQの技術的な特徴は、手元剛性を高めつつ、中間部との剛性差にメリハリをつけた点にある。これにより、パワーヒッターでも切り返しでシャフトが負けることなく安定し、かつダウンスイングではシャフトが大きくしなり、インパクトに向けて鋭く加速する。キックポイントは先中調子。従来の先調子系シャフトにありがちだった頼りなさやタイミングの取りにくさを克服し、滑らかさと走り感を高次元でバランスさせている。弾道は高弾道のドローバイアス。試打レビューでは「かなり捕まりが良くて走り感も非常に爽快」と評価されており、気持ちよく振り抜けることでヘッドスピードの向上も期待できる。
評価とターゲットゴルファー
Tour AD CQは、発売前から石川遼プロが実戦投入し、「感触が良い」とコメントするなど高い注目を集めた。プロ・上級者の中では、ドローボールで飛距離を最大化したいプレイヤーにフィットする。そして、このシャフトが最も輝くのは、アマチュア・中級者のスライサーが手にした時だろう。右へのミスを心配することなく、楽にボールを捕まえ、高弾道でキャリーを稼ぐことができる。まさに「スライサーの救世主」となり得るポテンシャルを秘めている。あるユーザーは「MJより元しっかりで、強く振れるのでコースでは方向が安定」と、走り系でありながら安定性も兼ね備えている点を評価している。
スペックと価格
メーカー希望小売価格は44,000円(税抜 42,000円)。40g台から70g台まで、TXフレックスも用意されている。
モデル | フレックス | 重量(g) | トルク(deg) | キックポイント |
---|---|---|---|---|
CQ-4 | R2 | 47 | 6.1 | 先中 |
R1 | 48 | 6.1 | ||
S | 49 | 6.0 | ||
CQ-5 | R2 | 52 | 4.6 | |
R1 | 53 | 4.6 | ||
S | 56 | 4.5 | ||
X | 58 | 4.5 | ||
CQ-6 | SR | 62 | 3.4 | |
S | 64 | 3.4 | ||
CQ-7 | S | 72 | 3.2 | |
X | 74 | 3.2 |
※データはカッツクラブの情報を基に再構成。
Tour AD VF (2023年10月発売)
コンセプト:「Victory Force」— 精度と飛距離を両立する、元調子進化系
2023年10月6日、ゴルフ界に衝撃が走った。タイガー・ウッズが使用したことで、発売前から伝説となった「Tour AD VF」の登場である。VFは「Victory Force(勝利の力)」を意味し、そのコンセプトは「点で攻める高い精度と飛距離の両立を求めるプロや競技志向のプレーヤーに向けた、強く叩けて軽やかに振り抜ける元調子進化系シャフト」。前作CQとは真逆の性質を持つ、ハードヒッター向けのモデルだ。

技術的特徴と性能
VFの技術的根幹は、XCから続く最先端素材の戦略的配置にある。手元部には「トレカ® M40X」を採用し、タメの強い切り返しでも挙動が安定し、スムーズな振り抜きを実現。そして先端から中間部には高強度・高弾性率を両立した「トレカ® T1100G」を使用。これにより、シャフト全体が強靭な一体感を持ち、当たり負けせずにボールを強く押し込める。キックポイントは中元調子。弾道は低/中弾道・低スピンで、叩いても左に行きにくい圧倒的な直進性が魅力だ。レビューでは「振りやすく、それでいて安定してめっちゃ飛ぶ!現時点での元調子の理想形」と絶賛されており、その完成度の高さがうかがえる。
評価とターゲットゴルファー
タイガー・ウッズの使用という最高の栄誉を得たVFは、言うまでもなく競技志向のプロ・上級者、ハードヒッター向けのシャフトである。XCの流れを汲みつつ、さらに振りやすさと安定性を追求したモデルであり、左を恐れず思い切り叩きたいゴルファーにとっては究極の選択肢となる。アマチュア・中級者にとっては、XC同様に非常にハードなスペックであり、相応のパワーと技術が求められる。スピンが多く、吹け上がりに悩むパワーヒッターが、そのポテンシャルを最大限に引き出せるだろう。ヘッドスピードが45m/s以下のゴルファーにはオーバースペック気味との評価もある。
スペックと価格
メーカー希望小売価格は46,200円(税込)。40g台から80g台まで、幅広いラインナップが揃う。
モデル | フレックス | 重量(g) | トルク(deg) | キックポイント |
---|---|---|---|---|
VF-4 | R2 | 46 | 5.6 | 中元 |
R1 | 46 | 5.5 | ||
S | 47 | 5.5 | ||
VF-5 | R2 | 55 | 4.3 | |
R1 | 55 | 4.3 | ||
S | 56 | 4.3 | ||
X | 59 | 4.3 | ||
VF-6 | SR | 64 | 3.3 | |
S | 65 | 3.3 | ||
X | 67 | 3.3 | ||
TX | 68 | 3.3 |
※データはカッツクラブの情報を基に再構成。
Tour AD GC (2024年9月発売)
コンセプト:「Game Changer」— 時代の中心となる、新世代ニュートラル
2024年9月6日、Tour ADシリーズは新たな基準を打ち立てるべく「Tour AD GC」をリリースした。GCは「Game Changer」の略。ゴルファーのスイングやフィジカルの進化、そしてクラブヘッドの高性能化という現代の潮流に対応した「新世代のニュートラルシャフト」として、新たなゲームの基準を作るという強い意志が込められている。その性能は、伝説的な名器「PT」の再来とも言われ、発売前から石川遼プロらがこぞってスイッチしたことで大きな話題となった。

技術的特徴と性能
GCの革新性は、二つの新技術に集約される。一つは「先太形状」。シャフト先端部の芯金を太く設計することで剛性を高め、変形を抑制する。もう一つは「AD SHIELD」。カーボン繊維の配置を最適化し、スイング中のシャフトのつぶれやねじれを徹底的に抑える。これらの技術により、ミート率とボールスピードを安定して向上させることが可能になった。キックポイントは中調子。弾道の高さ、スピン量、捕まり具合のすべてがニュートラルで、打ち手の意図を極めて忠実に再現する。フィーリングは、PTを彷彿とさせるクセのなさがありながら、より全体的にしっかりとしており、現代の大型ヘッドに打ち負けない強さを持つ。滑らかでスムーズなしなりが特徴だ。
評価とターゲットゴルファー
Tour AD GCは、まさに「現代の基準」となるシャフトである。プロ・上級者にとっては、自分のスイングを寸分違わずボールに伝えたい、究極の操作性を求めるプレイヤーにとって最高のパートナーとなる。あるレビューでは「硬く感じてるのに、しなって捕まるという不思議」と評されており、剛性感としなり感の絶妙なバランスが、高い操作性と安定した弾道を生み出している。アマチュア・中級者にとっては、これ以上ない「万能シャフト」と言える。特定の悩み(スライスやフック)を矯正するタイプではないが、クセがないためスイングの良し悪しが素直に結果に現れる。自分のスイングを見つめ直したいゴルファーや、長年シャフト選びに悩んできた「シャフト迷子」のゴルファーが、一度は試すべき一本である。
スペックと価格
メーカー希望小売価格は46,200円(税込)。40g台から70g台まで、幅広いスペックが展開されている。
モデル | フレックス | 重量(g) | トルク(deg) | キックポイント |
---|---|---|---|---|
GC-4 | R2 | 47 | 5.5 | 中 |
R1 | 49 | 5.5 | ||
S | 49 | 5.5 | ||
GC-5 | R2 | 54 | 4.5 | |
R1 | 55 | 4.5 | ||
S | 56 | 4.5 | ||
X | 59 | 4.4 | ||
GC-6 | SR | 64 | 3.1 | |
S | 65 | 3.1 | ||
X | 67 | 3.1 | ||
TX | 70 | 3.1 |
※データはカッツクラブの情報を基に再構成。
Tour AD 10年間の進化トレンドとマトリクス分析
2015年のGPから2024年のGCまで、10年間のTour ADシリーズの歩みを振り返ると、そこには単なるモデルチェンジではない、明確な進化のトレンドが見て取れる。それは、クラブヘッドの技術革新と、多様化するゴルファーのニーズに真摯に向き合い続けた結果である。
素材革命の衝撃:「トレカ®」が拓いた設計の自由度
この10年で最も大きな変化は、2019年のXCで初めて採用された東レの最先端カーボン素材「トレカ® M40X」と「T1100G」の登場だろう。従来のカーボン素材では、「硬くすれば脆くなる」というトレードオフの関係があった。しかし、「M40X」は高い弾性率(硬さ)と高い引張強度(粘り強さ)を両立させ、「T1100G」は極めて高い強度を誇る。これにより、設計者は重量を増やすことなく、シャフトの特定の部分の剛性を劇的に高めることが可能になった。XCやVFのような「叩いても絶対に左に行かない」超先端剛性のシャフトや、HDやUBのような「大型ヘッドに負けない」安定性を持つシャフトが生まれた背景には、この素材革命が大きく貢献している。
設計思想の変遷:多様化するニーズへの応答
この10年で、ドライバーヘッドは大型化・高慣性モーメント化の一途を辿った。ミスヒットへの寛容性が増す一方で、ヘッドが返りにくく、捕まりにくいという課題も生まれた。Tour ADシリーズの進化は、このヘッドの進化と密接にリンクしている。
- 大型・高慣性モーメントヘッドへの対応:GP、XC、UB、VFといったモデルに見られる「先端剛性の強化」は、インパクトでヘッドが当たり負けするのを防ぎ、エネルギー伝達効率を高めるための必然的な進化だった。また、最新のGCに搭載された「AD SHIELD」技術は、スイング中のシャフトのねじれや潰れを防ぎ、高慣性モーメントヘッドを安定してコントロールするための答えである。
- 多様化するニーズへの応答:グラファイトデザインは「100人いれば100通りのベストなシャフトがある」という哲学を、この10年で見事に体現した。ハードヒッターが求める「叩ける元調子系」(GP, XC, VF)、スライサーを救う「捕まる先調子系」(VR, CQ)、そして万人向けの「基準となる中調子系」(TP, IZ, HD, UB, GC)と、ラインナップはかつてないほど多様化した。これにより、ゴルファーは自らのスイングや悩みに合わせて、より最適な一本を選べるようになった。
マトリクス図で見るポジショニング
以下のマトリクス図は、この10年間の主要モデルがどのような性能特性を持つかを示したものである。縦軸は「弾き感」と「粘り感」、横軸は「捕まりやすさ」と「叩きやすさ(左に行きにくい)」を表す。各モデルがどの領域に位置するかを視覚的に理解することで、モデル間の関係性や進化の方向性がより明確になる。

あなたに最適な一本を見つける!Tour AD選び方ガイド
これまでの詳細な分析を踏まえ、ここでは読者が自分に合ったTour ADを見つけるための実践的なフレームワークを提示する。スペックデータだけでは見えてこない「自分だけの一本」を探す旅の、確かな道しるべとなれば幸いである。
ステップ1:スイングタイプと悩みから候補を絞る
まずは自分のゴルフを客観的に見つめ直すことから始めよう。
- ヒッター or スインガー?
- ヒッタータイプ(積極的に体を使い、パワーで飛ばす):切り返しでシャフトに大きな負荷をかけるため、手元がしっかりした元調子系(GP, XC, VF)が合いやすい。シャフトの粘りを感じながら、自分の力でボールを叩きにいける。
- スインガータイプ(リズムとテンポを重視し、滑らかに振る):シャフトのしなりを活かして飛ばすため、タイミングが取りやすい中調子系(TP, IZ, HD, GC)や、ヘッドが走る感覚を得やすい先調子系(VR, CQ)が候補となる。
- 持ち球とミスの傾向:
- スライスに悩む、もっと捕まえたい:ヘッドが返りやすく、ボールを捕まえる動きを助けてくれる先調子系の「CQ」や「VR」が最適な候補となる。高弾道でキャリーを伸ばしたい場合も有効だ。
- 引っかけ(チーピン)を嫌う、左が怖い:叩いても先端が暴れず、左へのミスを徹底的に排除する元調子系の「XC」「VF」や、先端高剛性の中調子系「UB」が心強い味方になる。
- 特に大きな悩みはないが、安定性を高めたい:クセがなく、スイングに忠実な反応を示す中調子系の「TP」「IZ」「GC」が基準となる。自分のスイングのベンチマークとしても最適だ。
ステップ2:キックポイントでフィーリングを合わせる
キックポイント(調子)は、シャフトのどの部分が最も大きくしなるかを示す指標であり、振り心地に直結する。
- 元調子(手元しなり):切り返しで「タメ」を作りやすく、シャフトが粘るようなフィーリング。ダウンスイングでじっくりと力を溜めて、インパクトで解放したいゴルファーに好まれる。
- 中調子(全体しなり):シャフト全体がスムーズにしなるため、クセがなくタイミングが取りやすい。最も多くのゴルファーに受け入れられる万能タイプ。
- 先調子(先しなり):インパクトゾーンでヘッドが鋭く走り、ボールを弾くフィーリング。シャフトの力でヘッドスピードを上げたい、ボールを楽に上げたいゴルファーに好まれる。
ステップ3:重量とフレックスを正しく選ぶ
シャフト選びで最も重要なのが、重量(ウェイト)と硬さ(フレックス)のマッチングだ。一般的には「自分が無理なく振り切れる範囲で、最も重いもの」が安定に繋がると言われるが、オーバースペックは禁物だ。
選ぶコツは球筋だけではなく、振りやすさを見ていただいた方がいいでしょう。球が少々悪くても振りやすければ、修正できますから。
上記の言葉通り、「振り心地」を最優先に考えるべきだ。ヘッドスピードを目安にするなら、一般的に以下のようになるが、あくまで参考値である。
- HS 38-42m/s: 50g台のRまたはSRフレックス
- HS 42-46m/s: 50g台のS、60g台のSRまたはSフレックス
- HS 46m/s以上: 60g台のSまたはX、70g台のSフレックス以上
最終ステップ:試打の重要性
ここまで理論的に候補を絞ってきたが、最後の決め手は「フィーリング」である。スペックデータだけでは決して分からない、自分との相性を確かめるために、必ず試打を行うことを強く推奨する。グラファイトデザインの公式サイトには、いくつかの質問に答えるだけで推奨シャフトを提案してくれる「シャフト・ファインダー」機能があるほか、全国のゴルフショップや練習場で定期的に試打会が開催されている。これらを積極的に活用し、候補のシャフトを実際に打ち比べて、最高の相棒を見つけ出してほしい。
まとめ:10年の革新と、ゴルファーと共に歩む未来
2015年の「Tour AD GP」から2024年の「Tour AD GC」まで、この10年間のグラファイトデザインの歩みは、まさに革新の連続であった。それは、単に新しいモデルを次々と生み出すことではなく、クラブテクノロジーの進化、スイング理論の変化、そして何よりもゴルファー一人ひとりの多様なニーズに、真摯に、そして誠実に応え続けてきた歴史である。
最先端カーボン素材「トレカ®」の採用はシャフト設計の常識を覆し、XCやVFのような先鋭的なモデルを可能にした。一方で、VRやCQは、飛距離に悩む多くのアマチュアに希望の光を与えた。そしてTP、IZ、GCといったニュートラルなモデルは、時代ごとの「基準」を打ち立て、我々ゴルファーが自分のスイングを見つめ直すための揺るぎない指標であり続けた。
これほど多様なラインナップを展開しながらも、その根底に流れる哲学は一貫している。それは、ブランド名に刻まれた「Accuracy & Distance」の飽くなき追求であり、それを支える「MADE IN CHICHIBU」の揺るぎない品質への誇りだ。100人いれば100通りのスイングがある。だからこそ、100通りの答えを用意する。その姿勢こそが、Tour ADがトッププロからアマチュアまで、あらゆるゴルファーに選ばれ続ける理由に他ならない。
ゴルフの世界は、これからも進化を止めることはないだろう。新たな素材が生まれ、クラブヘッドはさらに高性能化し、スイング理論も洗練されていく。その変化の最前線で、グラファイトデザインとTour ADシリーズは、これからもゴルファーと共に歩み、我々のゴルフを新たな次元へと引き上げるための革新を続けていくに違いない。この10年の歴史は、その輝かしい未来を約束する、確かな証なのである。
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