なぜゴルファーは三菱ケミカルのシャフトに魅了されるのか
ゴルフというスポーツにおいて、クラブの性能を決定づける心臓部、それがシャフトである。数多のシャフトメーカーが覇を競う中、三菱ケミカルは一貫して世界のトップシーンで圧倒的な存在感を放ち続けてきた。タイガー・ウッズをはじめとする伝説的なプレーヤーから、現代のツアーを牽引するトッププロ、そして我々アマチュアゴルファーに至るまで、なぜこれほどまでに多くのゴルファーが三菱ケミカルのシャフトに信頼を寄せ、魅了されるのだろうか。
目的と概要の提示
本稿では、2015年から2025年という激動の10年間に焦点を当て、三菱ケミカルが誇る二大ブランド「Diamana(ディアマナ)」と「TENSEI(テンセイ)」の進化の軌跡を、深く、そして体系的に解き明かすことを目的とする。この10年間は、ゴルフクラブヘッドが大型化・高慣性モーメント化し、ボールの低スピン化が進むなど、用具のテクノロジーが劇的に変化した時代である。本稿を通じて、読者はそれぞれのシャフトがどのような設計思想のもとに生まれ、いかなる技術的革新を遂げ、現代のゴルフにどう適応してきたのかを理解することができるだろう。それは単なる製品カタログの羅列ではなく、自身のスイングや求める弾道に最適な一本を見つけ出すための、確かな知識という名の羅針盤となるはずだ。
三菱ケミカルの強み
三菱ケミカルの絶対的な強みは、原材料である炭素繊維(カーボンファイバー)からプリプレグ(カーボン繊維を樹脂で固めたシート)、そして最終製品であるシャフトまで、すべてを自社グループ内で一貫して開発・製造できる世界で唯一のシャフトメーカーであるという点に集約される。これは「垂直統合」と呼ばれるビジネスモデルであり、他社にはない圧倒的なアドバンテージを生み出している。素材の特性を最も深く理解する者が、そのポテンシャルを最大限に引き出す設計を行い、完璧な品質管理のもとで成型する。この一貫体制こそが、常に高性能で高品質なシャフトを生み出し、プロが要求するミリ単位のフィーリングや性能の差に応え、アマチュアには安定したパフォーマンスを提供する信頼の源泉となっているのだ。
二大ブランドの位置づけ
この強固な基盤の上に、三菱ケミカルは特性の異なる二つのフラッグシップブランドを展開している。それぞれのブランドは、明確なコンセプトとターゲットゴルファー像を持っている。
- Diamana(ディアマナ): 2004年の誕生以来、ことをコンセプトとする、まさしくアスリート向けフラッグシップブランドである。伝説として語り継がれる「青・赤・白」のカラースキームは、シャフトの性能特性(キックポイントや弾道)を直感的に理解させる業界標準を築き上げた。Diamanaは、伝統とフィーリングを重んじながら、素材の革新によってその性能を深化させ続ける「王道」のブランドと言える。
- TENSEI(テンセイ): 日本語の「転生(Transformation)」をその名に冠し、2015年に登場したネオ・アスリートブランド。そのコンセプトは、選択肢の制限を設けずに多様な材料を用いてプレーヤーが求める性能を実現することにある。カーボン繊維だけでなく、ケブラー、アルミニウムヴェイパー、ボロン、タングステンといった異素材を複合的に使用することで、従来のシャフト設計の枠を超えた新たなフィーリングと性能を追求する。TENSEIは、テクノロジー主導で常に新しい可能性を切り拓く「挑戦者」のブランドである。
本稿では、これら二つのブランドが、2015年から2025年にかけて、どのように互いに影響し合い、また独自の進化を遂げてきたのかを、世代ごとのモデル解説、技術分析、そして市場での評価を交えながら、詳細に追っていく。
第一部:Diamanaシリーズ – 伝統と革新の軌跡 (2015-2025)
概要:世代を超えて受け継がれる「色」の哲学
Diamanaブランドの根幹をなすのは、2004年の初代モデルから確立された「色」による性能分類の哲学である。このシンプルかつ明快なシステムは、ゴルファーやフィッターがシャフトの基本特性を瞬時に把握することを可能にし、業界のデファクトスタンダードとして他社にも模倣されるほどの大きな影響を与えた。この哲学は、本稿で扱う2015年以降のモデルにおいても、ブランドのアイデンティティとして色濃く受け継がれている。
- 白マナ (White Board): 主に元調子。シャフトの手元側がしなり、先端側の剛性が高い設計。ダウンスイングでタメを作りやすく、インパクトでヘッドが暴れにくい。左へのミスを恐れずに叩きに行けるハードヒッター向けで、低打ち出し・低スピンの強弾道が特徴。代表的なモデル名には「D」や「W」が用いられる。
- 青マナ (Blue Board): 主に中元調子。シャフト全体がクセなくスムーズにしなる設計。スイングタイプを選ばず、多くのゴルファーにとってタイミングが取りやすい。操作性と安定性のバランスに優れ、中弾道を実現する。Diamanaの「基準」とも言える存在で、モデル名には「S」や「B」が用いられる。
- 赤マナ (Red Board): 主に中調子〜先中調子。シャフトの中間部から先端部にかけてしなり、ヘッドを走らせることでボールのつかまりと飛距離を追求する設計。高打ち出し・高スピン傾向で、ボールが上がりやすく、ドローボールが打ちやすい。モデル名には「M」や「R」が用いられる。
2015年以降に登場した第4世代から第6世代にかけて、Diamanaシリーズはこの伝統的な3つのプロファイルを基軸としながら、ゴルフクラブの進化、特にドライバーヘッドの大型化と高慣性モーメント(MOI)化という大きなトレンドに対応すべく、素材科学と設計技術の粋を集めて革新を続けてきた。本章では、その進化の具体的な道のりを世代ごとに紐解いていく。
第4世代 (2016-2020年) – 素材革新と多様性の萌芽
第4世代は、三菱ケミカルが誇る素材開発能力を遺憾なく発揮し、Diamanaブランドの性能を新たな次元へと引き上げた世代である。この時期、ブランドのアイデンティティはより強固なものとなり、同時に性能の多様化が始まった。
世代の特徴
第4世代を特徴づけるのは、新素材の積極的な採用と、それによって実現された性能の先鋭化である。
- 新素材の採用: この世代から、従来品に比べて強度を約20%、弾性率を10%向上させた画期的な炭素繊維「MR70」が本格的に採用され始めた。さらに、航空宇宙分野でも使用される極めて強靭な「ボロン繊維」をシャフト先端部に配置することで、インパクト時のヘッドのブレを極限まで抑制し、エネルギー伝達効率を最大化する設計が可能となった。
- 高級感のある外観: シャフト表面に金属イオンを蒸着させる「イオンプレーティング(IP)塗装」が施され、見る角度によって色合いが変化する深みのあるプレミアムな外観を実現。性能だけでなく、所有する喜びも満たすデザインが多くのゴルファーを魅了した。
- 性能の多様化: 従来の「白・青・赤」の三本柱に加え、それらの中間的な性能を持つ新たなコンセプトのモデルが登場し、より細分化されたゴルファーのニーズに応えるラインナップへと進化した。
主要モデル解説
第4世代は、それぞれが明確な個性を持つモデル群で構成されている。
第4世代 主要モデル
- Diamana BF (青系/2016年8月発売): “Blue Force”を意味するBFは、歴代青マナの系譜を受け継ぐモデル。クセのないスムーズなしなりと操作性の良さはそのままに、先端部に高弾性カーボンとボロン繊維を採用することで弾き感をプラス。シャープに振り抜けて飛距離を伸ばしたいゴルファーに向けた、攻撃的な青マナ。
- Diamana RF (赤系/2017年9月発売): “Red Forcer”の名を持つRFは、シリーズ中で最もシャフトの走りと弾きを重視する「赤の伝統」を継承。手元側の剛性を高め、シャフト中間部のしなりを強調することで、インパクトゾーンでの加速感を生み出す。ボールをつかまえ、高弾道で飛ばしたいゴルファーに最適。
- Diamana DF (白系/2018年8月発売): “Diamana First”の意を持つDFは、白マナのDNAを色濃く反映。シャフト全体の剛性を高め、特に先端部の強靭さを追求。左へのミスを恐れずに思い切り叩きに行ける、圧倒的な安定性が持ち味。低スピンの強弾道を求めるパワーヒッターから絶大な支持を得た。
- Diamana ZF (青・白系/2019年9月発売): 第4世代で新たに登場したコンセプトモデル。BF(青)とDF(白)の中間を狙い、操作性と安定性を高次元で両立させた。手元側の剛性を高めて中間部のしなりを感じやすくしつつ、先端はしっかりさせることで、幅広いゴルファーが安定して飛距離を伸ばせる設計。
- Diamana D-Limited (白系/2020年3月発売): 海外男子メジャー大会での勝利に貢献したツアープロトタイプを市販化したモデル。究極の安定性を追求し、ハードヒッターがどんなに強く振っても左に行かないという絶対的な信頼感を提供。まさに「リミテッド」の名にふさわしい、プロ仕様の白マナ。
分析:世代の総括
第4世代は、MR70やボロンといった新素材の力で、Diamanaが持つ「白・青・赤」のキャラクターをより先鋭化させると同時に、ZFという新たな選択肢を提示することで、ゴルファーの多様なスイングや好みに、よりきめ細かく対応できる体制を整えた世代と言える。この世代の成功が、次なる第5世代での包括的なテクノロジー革新への布石となったのである。
第5世代 (2020-2023年) – テクノロジーによる性能の再定義
第5世代は、Diamanaの歴史における大きな転換点となった。個別の素材改良に留まらず、シャフト全体の性能を体系的に向上させるための新たなテクノロジープラットフォームが導入されたのだ。この世代のキーワードは「統合」と「最適化」であり、現代の大型・高MOIヘッドとの完璧なマッチングを目指した。
世代を象徴する三大テクノロジー
第5世代のすべてのモデルには、以下の3つの革新的なテクノロジーが共通して搭載されており、これが世代全体の性能を底上げしている。
- X-LINK TECH™ (クロスリンクテック): マトリクス樹脂(炭素繊維を固める接着剤の役割)の組成を最適化し、原子レベルで強固な「架橋構造」を構成する新技術。これにより、従来品と比較して強度14%、弾性率15%、破断伸度8%という物性向上を実現。シャフトの不要な変形を抑え、エネルギー伝達効率を高めると同時に、より多くのカーボン繊維を使用できるようになり、フィーリングの向上にも貢献した。
- Consistent Feel Design (コンシステント・フィール・デザイン): 同じモデル内で重量やフレックスが異なっても、振り心地(フィーリング)の差を最小限に抑える設計思想。具体的には、重量帯ごとの重量差やバット径(グリップ側の太さ)の違いを大幅に縮小。これにより、ドライバーからフェアウェイウッドまで同じモデルで揃えた際の違和感がなくなり、フィッティングの精度と効率が劇的に向上した。
- New Tip Technology (ニュー・ティップ・テクノロジー): 近年のトレンドである高慣性モーメント(MOI)の大型ヘッドは、ミスヒットに強い反面、インパクトでヘッドが返りにくく、シャフト先端部への負荷が大きい。このテクノロジーは、先端部のねじれ(トルク)を最適化することで、大型ヘッドでもインパクトで当たり負けせず、エネルギーを効率的にボールに伝えることを可能にした。
主要モデル解説
これらの共通技術を基盤に、第5世代は各色のコンセプトをさらに洗練させたモデルを市場に送り出した。
第5世代 主要モデル
- Diamana TB (青系/2020年9月発売): 第5世代の先陣を切ったモデル。歴代青マナの「クセのなさ」を、新技術でさらに昇華。True Smooth E.I.(滑らかな剛性分布)により、スイング軌道を安定させ、幅広いゴルファーにマッチ。シリーズで初めて40g台をラインナップし、軽量帯を求めるゴルファーにも門戸を開いた。希望小売価格は44,000円(税込)。
- Diamana PD (白系/2021年9月発売): 第4世代のDFを進化させた、叩ける白マナ。強靭な先端剛性でアマチュアゴルファーの打点のブレをサポートし、安定した強弾道を実現。揺るぎない安定感と飛距離性能の両立をテーマに開発された。ハードヒッターが求める「左に行かない」安心感は健在。
- Diamana GT (青・白系/2022年9月発売): ZFの後継モデル。手元と先端の剛性を高め、中間部のしなりをより感じやすくすることで、ダウンスイング時の加速感を向上させた。安定性を保ちながらも、オートマチックにスピード感のある振り抜きを可能にする設計。ターゲットを狙い撃つ(Get Target)性能を持つ。
- Diamana WS (白進化系/2023年2月発売): PDをさらに進化させた「白マナの進化形」。先端の安定感はそのままに、手元側に粘り感のあるフィーリングを加え、切り返しで深いタメを作りやすくした。これにより、従来の「元調子はハードヒッター向け」というイメージを覆し、より幅広い層のゴルファーが扱える「やさしい元調子」を実現した。希望小売価格は55,000円(税込)。
分析:テクノロジーがもたらした性能変化
第5世代の進化は、単一の性能向上ではなく、全体のバランスを高い次元で調和させた点にある。X-LINK TECHはシャフトの芯を強くし、Consistent Feel Designはフィッティングの再現性を高め、New Tip Technologyは現代のクラブヘッドとの相性を保証した。これにより、ゴルファーはより安心して自分のスイングに集中でき、結果として安定した飛距離と方向性を手に入れることが可能になった。Diamana TBが幅広い層に受け入れられたのは、このテクノロジーの恩恵が最も分かりやすく現れた結果と言えるだろう。
Diamana TB スペック表
シャフト | フレックス | 重量(g) | トルク | キックポイント |
---|---|---|---|---|
TB 40 | R2, R, SR, S, X | 49.0 – 51.0 | 6.2 – 5.9 | 中元調子 |
TB 50 | R, SR, S, X, TX | 56.5 – 59.5 | 5.3 – 4.9 | 中元調子 |
TB 60 | SR, S, X, TX | 64.0 – 68.0 | 3.8 – 3.7 | 中元調子 |
TB 70 | S, X, TX | 75.5 – 77.5 | 3.4 | 中元調子 |
TB 80 | S, X, TX | 86.0 – 87.0 | 3.3 | 中元調子 |
出典: GDOゴルフショップ。重量はモデルにより異なる。
第6世代 (2024年-2025年) – 20周年の集大成と未来への展望
2024年、Diamanaブランドは誕生から20周年という大きな節目を迎えた。第6世代は、このアニバーサリーイヤーを飾るにふさわしく、これまでの歴史で培われた伝統と、第5世代で確立された最新テクノロジーを融合させ、各色のコンセプトをさらに先鋭化させることをテーマに掲げている。まさに20年間の集大成と呼ぶべき世代である。
世代の特徴
第6世代は、第5世代の三大テクノロジー(X-LINK TECH™, Consistent Feel Design, New Tip Technology)を継承・発展させつつ、それぞれの「色」が持つべき理想の性能を、より純粋な形で追求している。原点回帰と最新技術の融合が、この世代の核心だ。
主要モデル解説
2024年から2025年にかけて、伝統の「白・青・赤」が順次リリースされる計画となっている。
第6世代 主要モデル
- Diamana WB (白系/2024年1月26日発売): 第6世代の先鋒を飾る、新たな白マナ。WBは「White Board」の略で、原点回帰を象徴する。WSの粘り感を継承しつつ、先端部のねじれをさらに最適化。高級感のあるマットフィニッシュが特徴で、叩きに行っても左を恐れない絶対的な安定性を、より幅広いゴルファーに提供する。
- Diamana BB (青系/2024年9月6日発売): “Blue Board”の名を冠した、最もスタンダードな青系の最新モデル。手元から先端まで変曲点のない、なだらかな剛性分布により、自然でスムーズなしなり戻りを実現。高MOIヘッドと組み合わせても、プレイヤーの意図通りにヘッドが追従し、再現性の高いスイングをサポートする。女子ツアーで桑木志帆プロが使用し優勝に貢献したことで、発売前から大きな注目を集めた。希望小売価格は44,000円(税込)。
- Diamana RB (赤系/2025年2月7日発売予定): 第6世代の赤マナとして期待されるモデル。「New Tip Tec」を搭載し、先端部の剛性を下げることで高打ち出しを、最適なねじれ戻りにより適正スピン量を実現。「高く、遠くに」というゴルファーの根源的なニーズに応える。従来の赤マナが持つ「つかまり」のイメージを継承しつつ、X-LINK TECHによる安定性向上で、暴れることなくビッグキャリーを生み出す設計が期待される。希望小売価格は44,000円(税込)。
分析:ゴルファーへの具体的な提案
第6世代の登場により、ゴルファーの選択肢はさらに明確になった。
「左へのミスを徹底的に排除し、叩いていきたいならWB。スイングタイプを選ばず、安定した操作性で弾道をコントロールしたいならBB。ボールをつかまえて、楽に高弾道で飛距離を稼ぎたいならRB。」
という、Diamanaが築き上げてきた「色」の哲学が、最新テクノロジーによって、より分かりやすく、より高性能な形でゴルファーに提示されている。特にBBシリーズは、コーチからもと評価されており、現代のクラブとのマッチングの良さが際立っている。
Diamana BB スペック表
シャフト | フレックス | 重量(g) | トルク | キックポイント |
---|---|---|---|---|
BB 43 | R2, R, SR, S, X | 43.5 – 49.0 | 5.1 | 中元 |
BB 53 | R, SR, S, X, TX | 50.0 – 56.0 | 4.9 | 中元 |
BB 63 | R, SR, S, X, TX | 60.0 – 62.0 | 3.2 – 3.1 | 中元 |
BB 73 | S, X, TX | 70.0 – 72.0 | 2.9 | 中元 |
BB 83 | S, X, TX | 80.0 – 81.0 | 2.8 | 中元 |
出典: 第一ゴルフオンラインショップ。スペックはモデルにより異なる。
第二部:TENSEIシリーズ – テクノロジーで切り拓く新境地 (2015-2025)
概要:「転生」を名に冠したマテリアルの探求者
2015年、三菱ケミカルはゴルフシャフト市場に新たな衝撃を与えた。それが「TENSEI」シリーズの登場である。その名は日本語の「転生(Transformation)」に由来し、従来のシャフト設計の概念を「転生」させるという強い意志が込められている。TENSEIの核心は、三菱ケミカルの素材メーカーとしての強みを最大限に活かし、カーボン繊維という枠に囚われず、多種多様な素材(マテリアル)を複合的に使用することで、これまでにない性能とフィーリングを追求する点にある。
Diamanaが伝統的な剛性設計とフィーリングを「素材」で深化させるブランドであるならば、TENSEIは「テクノロジー」そのものをブランドの前面に押し出し、異素材の組み合わせによって新たな価値を創造するブランドと言える。このアプローチの違いが、両ブランドの明確な個性となっている。
「Diamanaが最高のフィーリングを持つシャフトを作ることを目指しているのに対し、TENSEIはテクノロジーに焦点を当てている。」
この章では、TENSEIが2015年の誕生から2025年に至るまで、どのように素材とテクノロジーを「転生」させ、ゴルフシャフトの新たな地平を切り拓いてきたのかを追跡する。
TENSEIの進化の系譜:CKからAV、そして1Kへ
TENSEIの進化は、手元側に採用される特徴的な複合素材の変遷によって象徴される。この進化の系譜は、安定性とフィーリングの両立という永遠のテーマに対する、三菱ケミカルの絶え間ない探求の歴史そのものである。
TENSEI CKシリーズ (2015年~) – 複合素材時代の幕開け
- キーテクノロジー: カーボンケブラー (Carbon Kevlar / CK) 織物。手元側のグリップ下に、高強度で振動減衰性に優れたケブラー繊維とカーボン繊維を編み込んだ織物を配置。これにより、シャフトの不要なしなりや潰れを抑制して安定性を高めると同時に、インパクト時の余分な振動を吸収し、プレーヤーにクリアな打感(フィーリング)を伝達する。
- 特徴: TENSEIブランドの原点。従来のカーボンシャフトが3~6種類の素材で構成されるのに対し、TENSEIは11種類もの異なる素材を組み合わせるという、画期的なマルチマテリアル設計を採用。これにより、剛性、重量、トルク、フィーリングといった要素を、より高次元でコントロールすることが可能になった。
- 展開: Diamana同様にBlue(中弾道)、White(低弾道)、Red(高弾道)の基本プロファイルに加え、カウンターバランス設計のOrangeを展開。特に「CK Pro Orange」は、手元側に重量を配分することでヘッドを効かせ、クラブスピードを向上させる設計がPGAツアーで爆発的にヒット。タイガー・ウッズやローリー・マキロイらが使用したことで、世界中のアスリートゴルファーの憧れとなった。
TENSEI AVシリーズ – 安定性のさらなる追求
- キーテクノロジー: アルミニウムヴェイパー (Aluminum Vapor / AV) コーテッドファイバー。カーボン繊維にアルミニウムを真空蒸着させた特殊繊維を手元側に採用。CKのケブラーよりもさらに緻密で薄い織物を形成でき、シャフトの円形維持能力(つぶれに対する強度)を向上させ、エネルギー伝達効率をさらに高めた。
- 特徴: CKシリーズで確立したマルチマテリアル設計を継承しつつ、AVファイバーによって安定性をさらに強化。後に、織物の素材感を活かした「AV RAW」シリーズとしてデザインを一新し、人気を博した。一部モデルには、スライスを軽減しドローを促進する「Straight Flight Weighting (SFW)」システムも搭載された。
TENSEI 1K Proシリーズ (2021年~) – フィーリングと性能の究極融合
- キーテクノロジー: 1K (ワンケー) クロス。従来のカーボンケブラー織物よりも3倍薄く、緻密な織り目の超高品質なカーボンクロス。これを手元側に配置することで、インパクト時のエネルギーロスを極限まで抑え、シャフトが持つ本来のポテンシャルを最大限に引き出す。同時に、高周波振動をよりダイレクトにプレーヤーの手に伝えるため、これまでにない「しなやか」で「芯のある」フィーリングを実現した。
- 特徴: TENSEIシリーズの集大成。1Kクロスに加え、Diamana第5世代で実績のある「Xlink Tech™」も搭載し、素材(1Kクロス)と樹脂(Xlink Tech)の両面からシャフト性能を極限まで高めている。まさに三菱ケミカルの技術の粋を結集したプレミアムライン。
- 展開: 2021年の「White」を皮切りに、2022年に「Orange」、2023年に「Blue」、そして2024年に「Red」が登場し、ついに4色のファミリーが完成。各モデルがそれぞれの弾道特性において、最高のパフォーマンスとフィーリングを提供する。
TENSEI主要モデル詳細分析
TENSEIシリーズの中でも、特に市場に大きな影響を与えたモデルを深掘りし、その性能特性とゴルファーへの適合性を分析する。
TENSEI CK Pro Orange – カウンターバランス革命
TENSEIの名を世界に轟かせた立役者。その最大の特徴は「カウンターバランス設計」にある。シャフトの手元側(グリップ内部)にタングステンパウダーを配合することで重量を増やし、クラブ全体の重心位置を手元寄りにする設計だ。これにより、ゴルファーは同じ総重量のクラブでもヘッドが軽く感じられ、振り抜きやすさが向上する。結果としてヘッドスピードが上がり、飛距離アップに繋がる。また、ヘッドを重くしてもスイングバランスが過大になりにくいため、重量のあるヘッドで安定性を確保したいプレーヤーにも最適な選択肢となった。この革新的な設計は、PGAツアーのトレンドを大きく変え、多くのフォロワーを生んだ。
- 合うゴルファー: 振り抜きやすさを重視し、ヘッドスピードを上げたいプレーヤー。重めのヘッドで安定させたいが、振り重たくしたくないプレーヤー。
- 合うヘッド: 重心距離が長く、操作性よりも直進性を重視した大型ヘッド。ヘッド重量を調整できるウェイト可変式ヘッド。
TENSEI Pro White 1K – 現代の叩ける安定系
2021年に登場し、1K Proシリーズの評価を決定づけたモデル。強靭な先端剛性と低トルク設計により、低スピン・低弾道の強弾道を生み出す「ホワイト系」の特性を、1KクロスとXlink Techで新たな次元に引き上げた。特筆すべきは、叩ける安定性を持ちながらも、手元側のしなやかなフィーリングが両立されている点。従来のハードな元調子シャフトにありがちだった「ただ硬いだけ」という印象はなく、切り返しで適度なタメを感じさせつつ、インパクトでは絶対に左に行かない安心感がある。現代の低スピンヘッドと組み合わせることで、最大飛距離を狙えるセッティングが可能となる。
- 合うゴルファー: ヘッドスピードが速く、スピン量が多くて吹き上がりに悩むハードヒッター。左へのミスを嫌い、安定してフェードボールを打ちたいプレーヤー。
- 合うヘッド: スピン量が多めのヘッドや、打ち出し角を確保しやすい高ロフトのヘッド。
TENSEI Pro Blue 1K – 万能性を極めた中調子
2023年7月に発売された、シリーズ待望の中調子モデル。WhiteやOrangeが元調子だったのに対し、シリーズで初めて中調子を採用し、より幅広いゴルファー層にアピールした。クセのない全体しなりでタイミングが取りやすく、適度な打ち出し角とスピン量を得られるため、まさに「万能」という言葉がふさわしい。1Kクロスによるエネルギーロスのないダイレクトな打感と、Blue系ならではの素直な挙動が融合し、プレーヤーの意図に忠実に反応する高い操作性を実現。特定の悩みを持つゴルファーだけでなく、自分のスイングを活かして安定したパフォーマンスを求める多くのゴルファーにとって、第一候補となりうるシャフトである。
- 合うゴルファー: スイングタイプを選ばず、安定性と操作性のバランスを求める全てのゴルファー。メーカー標準シャフトからのステップアップを考えている中・上級者。
- 合うヘッド: あらゆるタイプのヘッドと相性が良いが、特にニュートラルな性能のヘッドと組み合わせることで、シャフトの万能性が活きる。
TENSEI Pro Red 1K – 安定を手に入れた高弾道
2024年3月に発売され、1K Proファミリーを完成させた高弾道モデル。手元側の剛性を高く、先端側を軟らかくすることで、大きなしなりを生み出し、ボールを高く打ち出す「レッド系」の特性を持つ。従来の走り系・つかまり系シャフトにありがちだった「左へのミスが怖い」「タイミングがピーキー」といったネガティブなイメージを、1KクロスとXlink Techによる挙動の安定性で払拭。しなり戻りは速いが暴れることなく、インパクトでしっかりとボールを捉え、高弾道・適正スピンのビッグキャリーを実現する。という評価もあり、スインガータイプのゴルファーが飛距離を最大化するための強力な武器となる。
- 合うゴルファー: ボールが上がりにくく、キャリー不足に悩むゴルファー。スライス傾向にあり、自然なつかまりを求めるプレーヤー。ゆったりとしたスイングテンポのゴルファー。
- 合うヘッド: 低スピン性能が強いヘッドや、重心が浅くつかまりにくいヘッド。
TENSEI Pro 1Kシリーズ スペック比較表
モデル | キックポイント | 弾道/スピン | 主な特徴 | 価格(税込) |
---|---|---|---|---|
Pro White 1K | 元 | 低/低 | 叩ける安定性、強靭な先端 | 55,000円 |
Pro Orange 1K | 元 (カウンター) | 低/低 | カウンターバランス設計、振り抜きやすさ | 55,000円 |
Pro Blue 1K | 中 | 中/中 | クセのない万能性、素直なしなり | 55,000円 |
Pro Red 1K | 中先 | 高/中 | 安定したつかまり、高弾道 | 55,000円 |
出典: Golf Digest Online, Golf Digest Online 等の報道に基づく。価格は発売当初のもの。
第三部:横断分析 – 最適な一本を見つけるための羅針盤
DiamanaとTENSEI、それぞれの進化の軌跡を追ってきた。しかし、ゴルファーにとって最も重要なのは「自分にとって最適なシャフトはどれか?」という問いに答えることである。この章では、両ブランドを横断的に比較・分析し、シャフト選びの羅針盤となるような実践的な情報を提供する。
テクノロジー比較:Diamana vs TENSEI
両ブランドは、三菱ケミカルという同じ母体から生まれながら、その技術的アプローチには明確な違いがある。それは、ブランドが目指すゴール、すなわち「理想のシャフト像」の違いを反映している。
技術的アプローチの比較
- 共通基盤技術: Xlink Tech™は、第5世代以降のDiamanaとTENSEI 1K Proシリーズに共通して採用される中核技術。樹脂の性能向上という根本的な部分で、両ブランドの性能を底上げしている。
- Diamanaの独自技術:
- アプローチ: 伝統的な「白・青・赤」の剛性設計(EI分布)を、最高の素材でいかに忠実に、そして高性能に実現するかに主眼が置かれている。
- 主要素材・技術: MR70™(高強度・高弾性カーボン)、DIALEAD™(ピッチ系炭素繊維)、Boron Fiber(先端補強)、そしてConsistent Feel Design(フィーリングの統一化)など。これらは、シャフトの「骨格」そのものを強化し、洗練させるための技術である。Diamanaは、いわば「素材と設計で語る」ブランドだ。
- TENSEIの独自技術:
- アプローチ: 性能目標を達成するために、素材の垣根を越えて最適な組み合わせを探求する。カーボン以外の異素材を複合することで、新たなフィーリングと性能を生み出すことに挑戦する。
- 主要素材・技術: カーボンケブラー(CK)、アルミニウムヴェイパー(AV)、1Kクロスといった手元側の複合素材、そしてタングステンパウダー(カウンターバランス)など。これらは、シャフトに特定の「機能」や「特性」を付加するための技術である。TENSEIは「テクノロジーで語る」ブランドと言える。
フィーリングと性能への結びつき
このアプローチの違いは、最終的な製品のフィーリングと性能に明確に現れる。Diamanaは、シャフト全体のしなり方がスムーズで、クセがなく、プレーヤーの入力に対してリニアに反応する傾向が強い。「フィーリングが良い」と評されることが多いのはこのためだ。一方、TENSEIはモデルごとに特徴的な剛性感やフィーリングを持つ。CK Pro Orangeのカウンターバランスによる独特の振り心地や、1K Pro Whiteの「手元はしなやかだが先端は強靭」といった感覚は、複合素材技術の賜物である。どちらが優れているというわけではなく、プレーヤーがシャフトに何を求めるかによって、その評価は分かれる。
日本モデル vs グローバルモデル(USモデル)徹底比較
三菱ケミカルのシャフトを検討する上で、避けては通れないのが「日本モデル」と「グローバルモデル(通称:USモデル)」の違いだ。特にインターネット通販などで並行輸入品が容易に入手できる現在、この違いを理解しておくことは極めて重要である。
主な違い
- スペック(重量・硬さ): 最も大きな違いは、同じフレックス表記でもUSモデルの方が重く、硬い(トルクが絞られている)傾向にあることだ。一般的に「USモデルのSフレックスは、日本モデルのXフレックスに相当する」と言われることがあるが、これはあくまで大まかな目安。モデルや重量帯によってその差は異なり、単純な換算は危険である。例えば、ある比較では、日本仕様のTENSEIが50g台だったのに対し、US仕様のDiamanaは60g台であった。
- ラインナップ: 日本市場では需要の多い50g台や軽量フレックス(R2など)が充実している一方、US市場では80g台の重量級やTX(ツアーエクストラスティッフ)といったハードなスペックが豊富に揃っている場合がある。逆に、TENSEI CK Pro Orangeのように、当初はUSモデルのみの展開で、後に日本でも発売されるケースもある。
- 価格: 為替レートにもよるが、一般的にUSモデルの並行輸入品は、日本の正規代理店を通じて販売されるモデルよりも安価に入手できることが多い。
- グリップ: USモデルは、日本モデルに比べて標準で装着されているグリップが太い場合がある。これは、ターゲットとするゴルファーの平均的な手の大きさを考慮しているためだ。
選び方のポイントと注意点
これらの違いを踏まえ、ゴルファーは以下の点に注意してシャフトを選ぶ必要がある。
- 「アフターマーケット品」と「純正シャフト(Made for)」を区別する: 最も注意すべきは、クラブメーカーが標準装着している「純正シャフト」だ。これらは「Made for」シャフトとも呼ばれ、同じTENSEIやDiamanaという名前がついていても、市販されている「アフターマーケット品」とは設計や素材が全く異なる場合が多い。ヘッド性能に合わせてコストを抑え、万人向けに作られていることが多く、アフターマーケット品と同等の性能を期待するのは誤りである。一方、カスタムオーダーや工房で装着されるアフターマーケット品であれば、日本モデルとUSモデルでシャフト自体の性能に本質的な差はないとされる。
- スペックを冷静に比較する: 安価だからという理由だけでUSモデルに飛びつくのは賢明ではない。自身のヘッドスピードやパワー、スイングの特性を客観的に把握し、カタログスペック(重量、トルク、キックポイント)を慎重に比較検討することが不可欠だ。特に、普段日本モデルの60g台Sフレックスを使用している人が、同じ感覚でUSモデルの60Sを選ぶと、硬すぎて扱いきれない可能性が高い。
- 信頼できる販売店を選ぶ: USモデルを購入する場合は、メーカーから直接仕入れているなど、信頼性の高い販売店を選ぶことが重要だ。偽物や品質の劣る製品を避けるためにも、価格だけで判断しない姿勢が求められる。
究極のシャフト選びガイド:フィッティングの重要性
ここまで様々なモデルの特性を解説してきたが、最終的に最高のパフォーマンスを引き出す鍵は、カタログスペックだけでは分からない、ゴルファー一人ひとりのスイングとヘッドとの「相性」にある。その相性を見つけ出す唯一無二の方法が「フィッティング」である。
なぜフィッティングが必要か
最新の高性能ヘッドと、評価の高い高性能シャフトを組み合わせても、それが自分に合っていなければ宝の持ち腐れとなる。フィッティングは、弾道測定器を用いてスイングや弾道のデータを客観的に分析し、無数の組み合わせの中から最適な一本を導き出す科学的なプロセスである。これにより、「感覚」や「思い込み」に頼ったクラブ選びから脱却し、本当に結果の出るクラブセッティングを構築できる。
シャフト選びの3大要素
フィッティングにおいて特に重要視されるのが、以下の3つの要素だ。
- キックポイント(調子): シャフトが最も大きくしなる位置。元調子は切り返しでタメを作りやすく、先調子はヘッドが走りやすい。スイングのタイミングの取りやすさや、打ち出し角の高さに大きく影響する。
- 重量 (Weight): クラブの総重量は、振り心地、安定性、そしてヘッドスピードを左右する重要な要素。軽すぎるとスイングが不安定になり、重すぎると振り切れずにヘッドスピードが落ちる。
- トルク (Torque): シャフトのねじれの度合い。トルクが小さい(硬い)とヘッドの挙動が安定し、操作性が高まるが、ミスへの寛容性は低くなる傾向がある。トルクが大きい(軟らかい)とボールのつかまりが良くなるが、ヘッドが暴れやすく感じることもある。
実践的アプローチ:シャフトマトリックスの活用
フィッティングを受ける前の自己分析として、シャフトマトリックス図を活用するのは非常に有効だ。以下の図は、本稿で解説した主要なDiamanaおよびTENSEIシリーズのモデルを、弾道の高さ(Launch)とつかまり具合(Bias)でマッピングしたものである。

図2:三菱ケミカル 主要シャフトマトリックス (2015-2025年モデルの概念図)
この図を使って、例えば以下のように候補を絞り込むことができる。
- 現在の悩み: 「スピンが多くて吹き上がり、左への引っかけも出る」
- 求める弾道: 「低く、強く、ストレートからフェード系」
- マトリックス上の位置: 左下の「Low Launch / Fade Bias」領域
- 候補シャフト: Diamana WB, Diamana PD, TENSEI Pro White 1K など
このようにマトリックス図で大まかな方向性を定めた上で、フィッティングに臨み、候補となるシャフトを実際に試打する。そして、弾道測定器のデータ(打ち出し角、スピン量、ボール初速、飛距離、左右のブレなど)と、自分自身の「振りやすい」「気持ちいい」というフィーリングをすり合わせていく。このプロセスこそが、究極の一本にたどり着くための王道である。
結論:進化を続ける二大巨頭と、ゴルファーが取るべき選択
進化の総括
2015年から2025年という10年間で、三菱ケミカルのDiamanaとTENSEIは、ゴルフ用具のトレンドとゴルファーの多様化するニーズに応えるべく、それぞれが明確なアイデンティティを保ちながら、見事な進化を遂げてきた。その軌跡を総括すると、両ブランドの姿がより鮮明に浮かび上がる。
- Diamana: 「王道のアスリートブランド」として、20年間守り続けてきた「白・青・赤」の伝統的な系譜を、MR70やXlink Techといった最新の素材科学と設計技術によって絶えずアップデートし続けてきた。その進化は、フィーリングという官能的な価値を損なうことなく、現代のゴルフで要求されるパフォーマンスを追求する、まさに「深化」の歴史であった。Diamanaは、自分のスイングを確立し、クラブで弾道を操りたいと願うゴルファーにとって、常に信頼できる基準であり続けるだろう。
- TENSEI: 「挑戦のネオ・アスリートブランド」として、「転生」のコンセプトの下、カーボンケブラー、アルミニウムヴェイパー、1Kクロスといった異素材を果敢に導入し、テクノロジー主導で常に新しい性能とフィーリングを提案し続けてきた。特にカウンターバランス設計のCK Pro Orangeは市場に革命をもたらした。TENSEIは、既存の概念に囚われず、テクノロジーの力で自らのパフォーマンスを新たな次元へと引き上げたいと考えるゴルファーにとって、無限の可能性を秘めた選択肢である。
最終的なメッセージ
DiamanaとTENSEI。この二大巨頭の進化は、ゴルファーに豊富な選択肢をもたらした。しかし、選択肢が多ければ多いほど、迷いもまた生まれる。本稿で繰り返し述べてきたように、最高のパフォーマンスを引き出す鍵は、ブランド名や世間の評判、あるいは価格に惑わされることなく、自分自身のスイング、使用するヘッド、そして求める弾道に完璧にマッチした「唯一無二の一本」を見つけ出すことにある。
そのための最も確実で、そして最もエキサイティングなプロセスが「フィッティング」だ。本稿で得た知識を武器に、ぜひ専門家のいるフィッティングスタジオの門を叩いてほしい。客観的なデータとプロの知見、そしてあなた自身の感覚が交差するその場所で、あなたのゴルフを「転生」させる運命のシャフトが、きっと見つかるはずだ。
今後の展望
ゴルフシャフトの世界は、これからも進化を止めることはないだろう。さらなる新素材の登場、AI(人工知能)を活用した設計の最適化、製造プロセスのさらなる精密化など、可能性は無限に広がっている。素材から製品までを一貫して手掛ける三菱ケミカルは、その進化の最前線に立ち続けることは間違いない。我々ゴルファーは、彼らが次にどのような「革新」と「挑戦」を見せてくれるのか、期待を持って見守り続けたい。
コメント