株が下がっても買い続ける人たちの正体
この4月、日本株が大きく下がった。日経平均はわずか2週間で10%も値を下げた。為替も動いた。アメリカの政策も不安定だったし、投資環境としては決して良いとは言えなかった。
でも——。
そんな逆風の中でも、NISA口座への資金の流入は止まらなかった。ネット証券5社で合計6800億円もの買い付けがあったという。これは昨年8月の急落局面(7977億円)と比べても約85%に達する水準だ。
「え?こんなに下がってるのに、なんで買い続けられるの?」
そう思う人も多いと思う。でも、これは今の個人投資家の姿が少しずつ変わってきていることの表れなのかもしれない。
パニック売りしない投資家が増えている?
昔だったら、こういう下げ相場では「売らなきゃ!」という声が多く聞こえてきた。株価が下がると怖くなって、損切りしたくなる。それが人間の自然な反応だと思う。
でも、今はちょっと違う。
今回、NISA口座で買い付け額6800億円という数字を見ると、「むしろ下がったからこそ買った」という人が多かった可能性もある。実際、国内の個別株が3500億円と、昨年8月を大きく上回る買いを記録している。外国株に慎重になった反動もあるかもしれないけれど、それだけでは説明がつかない気もする。
実は、こうした動きの背景には、新NISAの影響があると言われている。特に、制度が新しくなってから投資を始めた20代〜30代の若い投資家たちが、ブレずに積み立てを続けているようだ。
投資を続ける「理由」がある
4月の下落で、投資信託の価格も大きく下がった。たとえば、人気の「オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)」は年初来で11%のマイナス。もし1月から毎月1万円積み立てていたとしたら、4月末時点では約4000円ほどの含み損になる計算だ。
それでも解約はそれほど出なかった。むしろ、日次の流入は続いていたという。
この背景には、「下がっても積み立てを続ける」というルールを自分の中で決めている投資家が増えてきたことがあるのかもしれない。
東京都在住の20代男性は、「証券会社から『下がったときこそ続けるのが大事』と聞いていたので、迷わず積み立てを続けた」と話している。つまり、単なる偶然ではなく、最初からそういう姿勢で投資に臨んでいる人がいるということ。
ネットの影響、じわじわと
それにしても——なぜ最近の若い投資家はパニック売りをしないのか。
その一因として、ネットの影響もあると思う。今はSNSやブログ、YouTubeなどを通じて、いろんな人の投資の記録や失敗談を見聞きできる。含み損を抱えている人が、「自分も評価損出てるけど続けてるよ」と言っていると、「あ、自分だけじゃないんだ」と安心できる。
下落時の心の持ちようについて解説している人もいるし、実際に「暴落は買い場」と考えて積み立て額を増やす人までいる。これまでの「周りに投資仲間がいないから不安で売ってしまう」という状況とは、ずいぶん違ってきている。
もちろん、ネットの情報は玉石混交で、正しいことばかりではない。でも、「不安を共有できる場がある」「実際に続けている人の声が聞こえる」というのは、投資を続けるうえで思った以上に力になるのかもしれない。
「米国株一辺倒」からの変化も
もう一つ注目すべきなのは、投資対象の変化だ。これまでNISAでの積み立てと言えば、ほとんどが米国株や世界株だった。でも、4月のデータを見ていると、日本株やゴールド関連への資金流入が目立っている。
たとえば、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」や「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」などが上位にランクインしている。これは、為替の影響や米国経済の先行きに対する不安から、分散投資を意識する人が増えてきた兆しかもしれない。
ただし、これが一時的なもので終わるかどうかは分からない。特に投資信託は、直近のリターンや話題性で売れ筋が変わることが多い。今後もアメリカ株が持ち直せば、再び資金がそちらに流れていく可能性もある。
それでも続けるという選択
この春、株が大きく下がっても買い続けた人たちがいた。下落を冷静に受け止め、積み立てをやめなかった。もちろん、すべての人がそうだったわけじゃないし、損が出てつらい気持ちになった人もたくさんいると思う。
でも、「下がっても続ける」と自分のルールを決めている人たちは、ちゃんとそのルールを守って行動している。それは、ある意味とても強いことだと思う。
投資は、短期間で結果を求めるものではない。むしろ、何年、何十年という時間の中で、自分の資産がどう育っていくかを見るもの。だからこそ、途中で怖くなってやめてしまうのではなく、「持ち続ける勇気」が少しずつ根付き始めている今の流れは、すごく大事なことだと思う。
最後に
今回のデータを見て、「新NISAって思ったよりもすごいことになってるな」と感じた。制度の仕組みや税制の優遇ももちろん大事だけれど、それ以上に「人の行動が変わってきている」ということが、なによりの希望に思える。
投資って、やっぱり人間の気持ちの問題なんだよなあ。ネットの情報、周りの声、自分のルール。それら全部が支えになって、ようやく「続ける」という行動につながる。今回の数字は、そのことを静かに物語っている気がする。
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